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リビングウィルの法制化で尊厳ある生き方を

広島第3選挙区支部長 HS政経塾6期生 野村昌央

◆リビングウィルとは?

2016年2月、「リビングウィル」の法制化を検討する超党派の議員連盟が、いわゆる「尊厳死法案」の国会への提出に向けて東京都内でシンポジウムを開きました。

「リビングウィル」とは「生前意思」のことで、自らの死後に資産をどうするか、葬儀はどのように行って欲しいかなどを記した遺言状の一種です。

その中でも、終末期の医療における意思表示に関し、法制化するかどうかの議論が行われています。

上述のシンポジウム後には、参院選を控えていたこともあり、議論を呼ぶことが懸念される尊厳死法案は国会に提出されませんでした。

終末期の医療における意思表示の法制化の議論では、「もうこれ以上治療の手立てが無い」患者の延命医療を施すのか、また、継続していくかの判断を、あらかじめ自分自身の意思表示をしたものに法的実行力を持たせるかどうかが検討されています。

医療技術の進歩によって、それまでは生命の危機となるような状況であっても、人工呼吸器や人工心肺などの装置の使用や、胃瘻を行うなど栄養することによって、生命を維持することができるようになってきました。

しかし、同時に、肉体機能を維持しているものの、意識は戻らず回復の見込みはない、衰弱していくのを待っているだけという患者も増えてきました。

◆延命医療の現状と法制化についての議論

2007年に厚労省から発表された終末期医療に関するガイドラインでは、「本人の意思表示」を優先して治療方針を決定することが示されていますが、あくまでガイドラインであるため、各々の病院の方針や家族の要望によっては尊重されない場合も考えられます。

また、本人の意思表示が示されていない場合には家族が本人の意思を推定することになっていますが、一旦延命措置を始めてしまうと本人が苦しんでいたとしても、その機械を外すことになかなか踏み出せない場合もあります。

平成24年度に内閣府が実施した調査によると、「延命のみを目的とした医療は行わず自然にまかせてほしい」という回答が91%でした。

しかし、リビングウィルの普及率は3.2%というアンケート結果も出ています(平成26年「終末期医療に関する意識調査検討会)。こうした状況を鑑みても、リビングウィルを法制化することでしっかりと本人の意思を尊重できる環境を整えることも検討する時期が来ています。

リビングウィルの法制化については、「そもそも病気を抱えて生きている人の医療機器を外させるのか」「新たな治療法が後から開発されたらどうするのか」「自殺幇助になるのではないか」などの反対する意見があります。

やはり、あくまでも「これ以上治療の手段が無く、尊厳を持って生きられない状態になった時に、延命医療を行うかどうか」の意思表示について法制化し、上述した反対意見のような状況は起こらないようにするべきです。

◆安心して人生を生き切る

自らの人生の終末期の治療方針をどう望むか、延命医療に関してどう考えるかについて、やはり自己決定権は持つべきであると考えます。

実際、法制化が進んでいる国では、遺言状と同じようにリビングウィルの普及も進んでいます。こうした状況は自分自身だけでなく、家族にとっても安心できるものです。

また、リビングウィルを用意することで、多くの方が尊厳を持って人生を生き切るということに関心を持ち、この世での人生を終えた時にスムーズなあの世への旅立ちを迎えていける方が増えていくことを願っています。

※「“人生の最終段階における医療”の決定プロセスに関するガイドライン」(2015年 厚生労働省)
※「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年度 内閣府)
※「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成26年 終末期医療に関する意識調査等検討会)

幸福実現党「日本を変える!123の政策」より
http://publications.hr-party.jp/files/policy/2016/008/origin/all.pdf

■終末期 はあの世に旅立つための準備期間と捉え、苦痛の期間を延命治療によって過度に長引かせることなく、幸福に旅立つ権利を尊重します。

※ 人間の本質は、神仏によって創られた霊的存在であり、魂である。この世に生まれ、さまざまな経験を通じてつかんだ学びを持って、あの世に還る――その繰り返しのなかで、人間は魂の向上を目指しているという人生観のこと。

野村昌央

執筆者:野村昌央

HS政経塾6期生

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