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日露平和条約に向けて:今こそ東京―モスクワリニア構想の提案を!

HS政経塾一期卒塾生 逗子市政を考える会 彦川太志

◆領土の帰属よりも、ロシアとの関係強化を狙う安倍政権

プーチン大統領の12月訪日が近づくにつれて、日本国内では平和条約締結に伴う日露関係の前進が大きく期待されています。

安倍首相はロシア側との交渉に当たって、総額1.7兆円に上る経済協力を提示すると共に、北方領土問題については二島(歯舞、色丹)「引き渡し」、二島(国後、択捉)棚上げと言った着地を模索していると見られています。(11/5現在)

特に北方領土の引き渡しに対する姿勢は、従来の「四島一括返還」を求めていた姿勢から、「二島」の「引き渡し」へと大きく変化しており、この部分の譲歩をもって「新しいアプローチ」と称していた事が指摘されています。

【参考】鈴木宗男氏による解説 
「Japanese expert proposes to sign peace treaty with Russia on basis of 1956 declaration(10/16タス通信)」
http://tass.com/world/904482

もしこの通りの交渉がなされるのであれば、「そもそも北方領土はロシア(ソ連)が不法占拠しているだけなので、日本に返すべきだ(返還)」という日本政府の従来の主張から、「第二次大戦後に領有権はロシアに移っているので、平和条約締結を機に二島を日本にプレゼント(引き渡し)するだけだ」というロシア側の立場に日本が譲歩したという事になります。

つまり、そもそもの領土の帰属にこだわるよりも、領土が返ってきて、しかもロシアとの関係を前進させることに国益を見いだしたと言えるでしょう。

南シナ海はおろか、日本海でも合同演習を行う中露両国の接近に楔を打ち込むことを優先している点、ある程度評価できると考えられます。

◆ロシア側の評価は必ずしも高くない?

しかしながら、ロシア側の反応を見てみると、必ずしも「二島引き渡し」と「経済協力」の平和条約パッケージが高い評価を得ているとは言い難いようです。

それは結局のところ、安倍政権による平和条約交渉の視野が北方領土からサハリン、ウラジオストク辺りの「極東」に集約されているほか、日露関係をいかなる方向に発展させて行きたいのかという、具体的な長期ビジョンが欠如していることに原因があると考えられます。

プーチン大統領は以前、ブルームバーグのインタビュー記事で「中露関係並みの高度な信頼関係」を日露で築くことが、領土問題進展の条件だと発言しています。

この記事の中で、ロシアは昨年「ハイレベルの信頼関係」を持つ中国と636億ドルの貿易を行い、1000億ドルの規模までこれを拡大しようとしている事を明かしています。

一方、同年度の日本とロシアの貿易総額は213億ドルであり、今回の経済協力1.7兆円を加味しても376億ドルと、中国の半分程度にしかならないことも指摘されているのです。

◆発想を大きく、ロシアとの中長期的な経済協力ビジョンを掲げよ

例えば長期的に「ロシアとの貿易総額を1000億ドル規模まで拡大する」という構想を打ち出すと共に、東京からモスクワまでリニア新幹線を走らせるようなプロジェクトを提案すべきではないでしょうか。

もちろん、北方領土は全島返還を求めて行くべきとは考えますが、視野が狭くなってはいけないと思います。

中国の覇権主義による危機が高まっている現在、日露平和条約の締結は、中露接近に歯止めをかけ、中国にアジアでの安保、外交上のフリーハンドを与えない、と言う戦略目標を達成するような構想のもとに組み立てられるべきではないでしょうか。

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

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