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宇宙に向かって一歩前進?――「超小型衛星」専用ロケット

HS政経塾6期生 須藤有紀

◆専用機登場?「超小型衛星」

 
9月23日の日経新聞朝刊を開くと、「『超小型衛星』利用にはずみ」と題した記事が目に飛び込んで来ました。

打ち上げられる予定の衛星は、東京大学チームが開発した縦横約10センチ、奥行き約30センチと「超小型」。「新たな通信技術を実証するための衛星」ですが、これに「専用ロケット」を使うと言うのです。「超小型衛星」とは、重さが100㎏以下の衛星のことを指します(9月23日日経新聞による)。

大型衛星の開発費用と比べて格段に安く、開発期間も1~2年と短い超小型衛星は、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。

◆「超小型衛星」で広がるチャンス

まず、短期間での打ち上げによって宇宙での実験や、民間企業が編み出した宇宙技術のテストなどの技術開発も進めることができます。

大学等での研究もしやすくなり、技術者育成も進みます。

また、安価に大量の衛星を打ち上げることが可能になれば、僻地の通信環境整備や、農作物の育成状況把握、大型店舗の車両数や道路・交通状況など人の動きを把握することによる企業の経営計画・出店計画への活用、投資判断材料など、さまざまな活用が可能になります。

さらに、国際的に問題視されているデブリ(宇宙ゴミ、破壊された衛星の破片など)の回収も可能になります。
地球観測による安全保障上の役割や、防災面での役割も大きく期待できます。

今までの宇宙開発のネックは、主に膨大な経費がかかることと打ち上げ時期が安定しないことでしたが、超小型衛星と専用ロケットはその弱点を補うことが期待されます。

超小型衛星の開発費は従来の衛星の100分の1以下、専用ロケットも日本の主力ロケットの10分の1以下の開発費で賄えるそうです。

専用ロケットによって、安価で安定した打ち上げが可能になれば、宇宙分野の遅れが指摘されていた日本も競争力を持てるかもしれません。

◆ロケットって何だ?

そもそもロケットとは、基本的には人工衛星を宇宙に運ぶための使い捨ての道具です。

再利用可能なものとして開発されたスペースシャトルは、使い捨てロケットの4倍近い維持管理費がかかり、実用的ではありませんでした。実用的な再利用可能ロケットは現在、鋭意開発中です。

日本で代表的な「H-llA」ロケットは、下から順にブースター付きの第一弾ロケット、第二弾ロケット、衛星フェアリング(人工衛星を守るためのカバーのようなもの)を組み合わせて構成されています。

積み込んだ液体酸素と液体水素を、燃焼室で燃やすことによってガスを噴射し、噴射するときの推進エネルギーを使って宇宙に出るのです(液体燃料の場合)。

奇跡の帰還を果たして感動を呼んだ「はやぶさ」も、このH-llAロケットによって打ち上げられました。

今まで超小型衛星を打ち上げるためには、(1)大型衛星と一緒に打ち上げてもらう、(2)小型ロケットを利用する、(3)国際宇宙ステーション(ISS)からの放出、という3つの手段しかありませんでした。
 
大型衛星は開発費用が数百億円に及び、頻繁に打ち上げることが難しいうえに開発も遅れることが多いという問題点があります。

ISSからの放出は、衛星の周回軌道がISSの周回軌道に限られるため、すべての衛星に対応できないという難点があります。

小型ロケットも、イプシロンは打ち上げ費用に50億円程度かかるなど、安価で打ち上げやすいとは言えません。

しかし、超小型衛星専用のミニロケットができれば、こうした問題を解消できる可能性が出てきます。

◆広がる夢、今後の課題

幸福実現党は、経済政策の中に、未来産業振興として10年以内に100兆円の投資や、産学連携の促進等を盛り込んでいます。

宇宙開発を始めとした新しい産業は、事業効果が大きく、技術革新の可能性があるため、もっと大胆に投資することが重要であると考えているのです。

超小型衛星専用ロケットを機に、日本は「国として産業を育てる」という気概を持ち、明確な方向性を示しつつ官民一体となった宇宙開発に力を注ぐべきではないでしょうか。

宇宙は未知の領域であると同時に、無限の可能性と富を秘めたフロンティアです。日本の未来を拓く上ためにも宇宙関連事業に対する、より積極的な投資をすべきであると思います。

【参考】
三菱重工HP http://www.mhi.co.jp/discover/kids/techno_world/rocket/index.html
JAXA はやぶさHP http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/index.html
『NASAより宇宙に近い町工場 ―僕らのロケットが飛んだ―』 著:植松努 
発行日:2015年12月20日 第1刷 出版:ディスカヴァー携書

須藤有紀

執筆者:須藤有紀

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