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未来の見える農業政策とは

文/幸福実現党・岡山県本部副代表 たなべ雄治

◆今の農業政策に未来はあるのか

農業に関して取り沙汰されて久しいものに、後継者問題があります。なぜ後継者がいないのでしょうか。答えは簡単で、儲からないからです。もし農業が儲かる職業ならば、人手不足にはならないはずです。

今、日本の農業は、補助金と関税により厳重に保護されています。米であれば、価格維持のためにも予算が使われてきた経緯があります。GDP比で1%に満たない農業に、国家予算の7%を超える額が充てられてきました。

また、消費者の立場で言うと、市場原理から外れた高い米を買わされて、さらに農家のために税金が取られているのです。踏んだり蹴ったりです。

しかし、日本の農業は、そこまで保護しなければならないほど弱いのでしょうか。そして、このように保護されなければ成り立たない職業に、若者が魅力を感じるでしょうか。

◆農業政策の問題点は政治のご都合・・・

農家の7割が米農家ですが、生産額では農業生産高全体の2割に過ぎません。酪農と比較してみると、生産額で酪農は米の約半分ですが、戸数で比べると酪農家は米農家の100分の1しかいません。

儲かりにくい業種に、多数の労働力が集まっているわけです。なぜこんなことが起こるのでしょうか。

これこそ、政治の都合です。農業人口を維持してきたのは、選挙の得票のためです。補助金で手厚く保護して、政策を利用した買収行為により、自分たちの票を集めてきたのです。農業政策よりも、農家戸数の維持を優先するという、自民党政治の典型です。この他にも様々な業界に対して同じようなことをやって、その結果が1,000兆円を超える政府の借金です。これは責任問題です。

本当に国民のための政治をするならば、求められるのは農業従事者人口ではなくて、市場原理に基づいた安くて美味しく安全な農作物の供給であるはずです。

◆農業を保護したい従来型政治の主張

農業を保護するべきだという論拠としてしばしば用いられるのが、農業規模の問題です。

農家一戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、EUが6、アメリカが75、オーストラリアで1,309となります。だから勝てないという主張なのですが、しかしよくよく見てみると、オーストラリア1,309に対してアメリカの75が勝っているのです。

なぜこんなことが起きるのかというと、土地の肥沃度などでできる作物は変わりますし、単位面積当たりの収量も大きく変わるからです。

広いからそれだけで有利かと言えば、オーストラリアでは痩せた土地が多く、水などの環境の制約もあり、効率的な農業は実現できていないのです。

農業の現場を見て、もっと地に足を付けた議論をしなければなりません。

◆日本の農業の強み

日本の農業の最大の強みは、水利でしょう。非常に恵まれています。

水田の多さにその特徴が表れています。水で洗い流すので塩害を防ぐことができており、水で覆うために土壌浸食を防いでいます。また水田が保水をしながら、土砂流出の抑制もしており、土地の保全に重要な役割を果たしているのです。

また、作付面積からすると一見不利に見える棚田ですが、かけ流し灌漑といって、水を上手に利用しています。水利で見た時に、日本の米作の優位は抜きん出ています。海外の米作が、実はそれほど日本の脅威にはならない大きな理由の一つです。

日本の米作の成功事例を挙げると、中山間部の高低差を利用した、田植えや稲刈りの時期をズラす農業があります。実例では、夫婦二人で30ヘクタールの耕作を実現できています。米作農家の平均が0.7ヘクタールですから、中山間部にして十分な大規模農業が実現されています。

別の工夫もあります。穀物と畜産の組み合わせた複合経営です。穀物は価格変動が大きいのですが、価格が上昇したときには穀物として売り、下落したときには飼料用作物として牛肉を売る、こういう事例もあります。

新しいチャレンジに挑む農家が、日本の農業に希望を見せてくれています。

◆国際競争力を高めて、世界で勝負しよう!

保護政策のせいで、農作物が市場原理よりも高くなっていたら、海外で売れるわけがありません。

お米であれば、安くて美味しくて安全であるからこそ、海外で勝負ができるのです。そのために、まだまだやるべき事ができていないのではないでしょうか。

できることは残っています。それをやらずに現状維持を続けるのか。それとも市場原理を取り入れて、勝てる農業・儲かる農業を目指して一歩踏み出すのか。TPPを目前に控えて、日本の農業の分岐点は、今まさにそこまで迫ってきています。

たなべ 雄治

執筆者:たなべ 雄治

HS政経塾 三期生

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