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米国とロシアの「代理戦争」へ――泥沼化するシリアに解決策はあるのか

文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ

◆シリアで何が起こっているのか

シリア内戦から約5年が経過した今、ロシア軍が空爆による介入を強化しさらに泥沼化しています。

複雑な中東情勢。そもそもシリアで何が起こっているのでしょうか。そして、なぜ、ロシアが介入を強化したのでしょうか。米国は?日本は?泥沼化する内戦に解決策はあるのでしょうか。

シリア内戦が始まったのは2011年。「アラブの春」と呼ばれる中東での民主化の動きを受けて、シリアでもアサド政権に対する反政府運動が激化しました。

その運動に対して、アサド大統領はメディアやインターネットの検問を続け、反政府デモを武力で弾圧したことをきっかけに内戦が起きました。

アサド政権による化学兵器の使用などで何十万人もの市民が殺害されています。内戦を止めるために米国やヨーロッパなどの西側諸国が反体制派を支援し、政府軍をイランやロシアが支援しました。

しかし、米国がシリアへの軍事介入の機を逸したために泥沼化。「イスラム国(IS)」の台頭を許し、ヨーロッパへ大量の難民を生み出すことになりました。

◆シリア内戦の「隙」に入り込んだ「イスラム国(IS)」

内戦が複雑化している原因としてイスラム国の存在があります。

イスラム国は、イラクの少数派であるスンニ派で、自分たちに不利な政策を行うシーア派の大統領に反対している者と、シリアのアサド政権に反対している者とが結びついてできた組織です。

シリアの反体制派のグループの一つとして出てきたのがイスラム国でもあります。

イラクとシリアを拠点にし、残虐なテロを行うイスラム過激派組織であるイスラム国が現在、シリア全土のほぼ2分の1を占拠、支配しています。なぜ、イスラム国がここまで勢力を拡大できたのでしょうか。

シリアでは、政府軍と反体制派が熾烈な戦闘を行っており、政府軍も反体制派もお互いを「主要な敵」と位置付けています。

つまり、お互いに主要な敵は「イスラム国」ではないため、イスラム国を一掃する戦力を振り分けていません。その戦闘の「隙」をついてイスラム国は支配地を拡大しているのです。

また、米国など西側諸国から反体制派への武器供与や政府軍への空爆がイスラム国を助けている可能性もあるため非常に複雑です。

◆米国とロシアの「代理戦争」と化している現状

その「イスラム国を一掃する」という目的で今月、ロシアが介入し空爆を行いました。

シリア国内に軍港を持つロシアとしては、地中海沿岸まで勢力を拡大してきたイスラム国をこのまま放置しておくわけにはいきません。

ロシアの国益を守るために「イスラム国を一掃する」という大義名分は理解できます。

しかし、実際にロシアが行っている空爆はイスラム国に対してではなく、反体制派に向けて行っている方が多いといいます。

また、反体制派への支援を強化するために、9日、米国は武器の供与に踏み切ると発表し、米軍が輸送機からイスラム国と戦うアラブ勢力に弾薬50トンを供与しました。

ここで問題なのは、米国もロシアも「イスラム国を一掃する」という同じ目的で武器の供与や空爆を行っていますが、実際は政府軍対反体制派の戦闘が激化し、「代理戦争」を行っている状態になってしまっています。

果たしてこのような複雑なシリア内戦を解決する方法はあるのでしょうか。

◆米国とロシアが協力体制を築く

私たちは米国など西側諸国のメディアが発信する情報に触れることが多く、ロシアが悪者だと考えがちです。

しかし、今回の介入に関しても、プーチン大統領は、まず「イスラム国」を一掃し、次に政府軍と反体制派の停戦を行い(反体制派を一掃する荒技かもしれませんが)、アサド政権を退陣させるというようなシナリオを描いているようにも見えます。

シリアに軍港を持つロシアにとって自国の国益を守るためにそのような長期的な戦略を持つことは普通のことかもしれません。

また、「世界の警察官」を退いた米国に代わり、中東でのリーダーシップを取ろうとしているのかもしれません。

米国もロシアも互いに「正義」を実現しようとしていますが、真のリーダー国家として世界の平和を願うのであれば、自国の国益だけではなく、宇宙船「地球号」の一員としてもう一段、大きな視点から考え行動していく必要があるのではないでしょうか。

シリア内戦の解決のためには、米国とロシアが協力して「イスラム国」を一掃し、政府軍と反体制派を停戦に持っていき、アサド政権を平和裡に退陣させ新政府をつくることを目指すべきです。

◆日本がなすべきこと

米国とロシアが協力体制を築くことは簡単ではありません。しかし、日本が調停役を務めることができれば不可能ではありません。

シリアも日本を尊敬していますし、宗教的にもキリスト教でもイスラム教でもない日本は反発を招くことが少ないため交渉も行い易いはずです。

米国やロシアを相手に日本が調停役を務め、説得するためには、宗教的な思想背景を理解することが不可欠です。

そして、憲法改正を実現し、自分の国は自分で守る「自立した体制」と世界情勢を見誤らないように正確に情報分析を行う「情報機関」を一日でも早く創設することです。

世界は軍事力による勢力均衡(バランス・オブ・パワー)で動いています。だからこそ日米同盟を堅持しつつ、ロシアと友好関係を築くために経済協力ができる日露協商条約を結んでいくことが必要不可欠です。

理想実現に向けた第一歩として、日本政府は、大きなカギとなる日露首脳会談を年内に行い、米国の圧力を回避するために然るべき人物や組織にアプローチすることが重要です。

日本が真のリーダー国家としての使命に目覚めた時に世界は救われるのです。

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

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