これで満足できますか?――日本総理の9年ぶりアメリカ公式訪問
文/HS政経塾部長 兼 幸福実現党事務局部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ
◆日本の総理として9年ぶりのアメリカ公式訪問
4月26日から5月3日までの日程で、安倍首相はアメリカに公式訪問をしています。
日米関係にとって大きな成果を生む一方、日本が乗り越えるべき課題も浮き彫りにしていると言えそうです。
今回の公式訪問のハイライトは、27日から29日です。
27日:新たな日米防衛協力の指針について合意(新ガイドライン)
28日:日米首脳会談
29日:アメリカ議会・上下両院合同会議
特にアメリカ議会・上下両院合同会議で、安倍首相は、日本の首相として初めて演説しました。
演題「Toward an Alliance of Hope(希望の同盟へ)」の、未来志向の日米同盟というメッセージは、アメリカ議員におおむね好意的に受け止められたようです。
演説の中で、硫黄島の指揮官・栗林中将の孫である新道義孝・前総務相と、硫黄島に上陸したローレンス・スノーデン元海兵隊中将(94)が紹介され、二人は握手をしました。
キャロライン・ケネディ駐日大使は、「まさに『和解』の力を示す実例となると思う」と(4/30読売夕刊)称賛しています。
◆歴代内閣の立場を引き継いだ歴史認識
確かに、今回のアメリカ公式訪問で、TPP締結への期待、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)への懸念、尖閣諸島の日米安保条約の適用を改めて明言しました。
また、法の支配に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域の発展など、日米の経済・安全保障面での協力を深めていく方向性が見られたのは素晴らしいことです。
しかしながら、その一方、歴史認識については次の通りです。
「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代首相と全く変わるものではありません。」
(「希望の未来へ」安倍首相 アメリカ議会両院会議演説より)
保守系有識者の中でも、安全保障と歴史認識については分けて考えるべきという見方が存在します。
歴史認識問題は、ほとぼりが冷めるまで放っておき、安全保障面でやるべきことを着々と進めるという考えで、その視点から見れば、今回のアメリカへの公式訪問は十分な成果を生んでいると評価できるのかもしれません。
さらに、今回の演説では、村山富一首相談話にある「heartfelt apology(心からのお詫び)」という文言を使っていません。
スピーチライターの谷口内閣官房参与が、事前にアメリカ議会関係者や有識者の意向を受けつつ、日本側の主張も盛り込むべくぎりぎりの調整をしたという面では、これも一つの成果なのかもしれません。
◆日本はルールメーカーとなる覚悟を
しかし、だからといって、これで満足していいのでしょうか。「これでよくやっていると思う」こと自体が、日本が乗り越えるべき課題なのではないでしょうか。
日米同盟を「希望の同盟」として「世界をもっとはるかに良い場所に」していくのであるならば、アメリカの外交政策の限界を補うためにも、日本側の哲学を確固としたものとするべきです。
例えば、クリミアを併合して国際的に非難を受けているロシアに対してアメリカと協調しつつ、どのように日本独自の動きを展開できるのか、中東の混乱についてもどのように日本として仲介していくのか。他国の動向だけを気にしていても答えは出ません。
日本としてどうしたいのか。日本はルールをつくる側としての考え方――、「優位戦思考」を持つことが求められています。
◆ここで満足しては、日本の誇りは取り戻せない!
果たして、戦後70年の安倍談話がどのような内容となるのか――。4月22日のバンドン会議、29日の演説の内容を見れば、残念ながら現状では、河野談話や村山談話に含まれる文言を、直接は使わなくとも、全体として踏襲する方向に傾きつつあります。
国務省のサキ前報道官の「これまで村山富市元首相と河野洋平元官房長官が示した謝罪が、近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだった」という見解(4/30朝日)に象徴される、世界に蔓延してしまった誤解を解くためにも、国内世論の喚起が必要です。
幸福実現党の、『「河野・村山談話」の無効を宣言し、自虐史観を一掃する「戦後70年談話」を求める署名』活動は、正にその取り組みの一環です。
他国の動向に左右されて、歴史的真実に真摯に向き合わなければ、「未来志向」は単なる言葉となり、憲法改正の実現は遠のくばかりです。もっと真実に対して、日本はハングリーであるべきです。