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国家のビジョンは予算で示せ!

文/幸福実現党・岡山県本部副代表 たなべ雄治

◆かつて、国立の大学院での出来事

私が大学院の工学研究科に在籍していた時の出来事です。研究していた分野で、ある高価な実験装置があれば研究が一気に進むという状況がありました。

上司の助教授に相談したところ、いくらかの予算オーバー。しかし予算を繰り越して、翌年度分の一部と足せば十分に手の届く額でした。

ところが、制度上予算の繰り越しは出来ないとのことでした。予算を使い切らなかった場合は、余った額が翌年度の予算から削られるのだとか。「必要なかったのね」と判断されるのだそうです。

そして翌年の三月には予算が余っているのだとかで、要るのか要らないのか分からない購入物をリストアップさせられたのでした。

◆単年度予算の弊害

そんな悔しい思いもいつしか忘れ去り、それが単年度予算という制度の所為だと知ったのは随分後になってからでした。

単年度予算には、予算を消化するための無駄遣い、予算配分の硬直化、など様々なデメリットが考えられます。国の組織の随所で、学生の時分の私が経験したような矛盾が発生しているのでしょう。現に様々な指摘がなされています。

◆単年度予算にもそれなりの意味はあるが・・・

弊害の目立つ単年度予算ですが、全くの無意味ではありません。国家の予算を一年単位で分断してチェックすることで、財政権の乱用を防ぐという意義はあるのです。

とはいえ単年度予算が、財政権力を抑制する唯一の制度というわけではありません。複数年度予算制度でも、それをチェックする方法くらい存在します。年度をまたいだ柔軟な予算のやりくりを、財政権の乱用だと理解するのは行き過ぎでしょう。

◆複数年度予算は導入可能

憲法第86条では、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」と規定していますが、ここに会計年度の定義はありません。

会計年度を定めているのは、財政法第11条 「国の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終るものとする。」です。

憲法改正を待たずとも、財政法の改正で複数年度予算の導入は可能です。

◆大切なのは国家のビジョン

ただ複数年度予算を導入すれば解決するというものでもありません。柔軟な予算編成ができることは重要ですが、それよりもやはり「何を目的として国民の血税を使うのか」という国家ビジョンこそが大切です。

予算編成における国家ビジョンの欠落を如実に示すのは、何と言っても防衛予算でしょう。

中国は毎年毎年、日本の数倍の予算を国防費につぎ込み(Global Note社調べでは7倍)、さらにその額は伸び続けています。

中国の国防費がGDP比4%程度なのに対し、日本はなぜか数十年一貫してGDP比1%を死守しています。アメリカの国防予算対GDP比率の変動は大きいですし、2013年のインドの国防予算対GDP比は実に8%でした。

安全保障環境に応じて国防予算を変動させるのは、国家を維持するうえで当然のことです。ましてや日本は、尖閣諸島が中国に脅かされるなど、国防の危機にあります。

補正予算や継続費という制度をフル活用して防衛力強化に努めてはいますが、焼け石に水といった感が否めません。

防衛予算により、日本のビジョンと意思をはっきりと示すべきです。

◆予算委員会は悲劇か喜劇か

会計年度の開始日4月1日までに予算を成立させるため、3月までは予算国会とも言われます。

予算委員会がTV中継されますが、その中で予算の議論はほとんどされません。話題に上るのは、国会議員のスキャンダルばかりです。

素行不良な与党議員も問題ですが、本質的な予算の議論をすることなく足を引っ張ることしか考えない野党議員にも残念な限りです。

有権者を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたいものですが、私たち有権者も、よく政治家を見て投票する必要があるのでしょう。

政治に関心のある人ほど、政治に失望していたりするものです。しかしもう一歩踏み込んで、政治のあるべき姿を考えてゆかねばなりません。

統一地方選を目前に控えています。”考える人”の力を結集して、政治を正していくことも幸福実現党の仕事です。

たなべ 雄治

執筆者:たなべ 雄治

HS政経塾 三期生

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