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テロに屈する歴史を繰り返してはならない

文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太

◆イスラム国による日本人殺害予告

20日、民間軍事会社の経営者、湯川遥菜氏、フリージャーナリストの後藤健二氏と見られる日本人二人に対して、イスラム国による殺害予告とみられる映像がyoutubeに投稿されました。

イスラム国は、エジプト・カイロで行われた安倍首相の演説の「イスラム国と闘う周辺国に2億ドルの支援を行う」という内容に反発し、「72時間以内に、支援額と同規模の身代金2億ドル(240億円)を払わなければ人質を殺害する」と日本政府に要求しています。

それに対し、安倍首相は外遊先のイスラエルにおいて記者会見を行い、「人命を盾に取って脅迫することは許し難いテロ行為だ。二人の日本人に危害を加えないよう、そして直ちに解放するよう、強く要求する。」と述べました。

そして、エジプト・カイロでの演説でも繰り返し述べていた「中庸こそ最善である」という中東地域に広がる格言をもとに「寛容」の大切さを改めて訴えました。

しかし、「身代金を払う考えがあるのか」という外国人記者たちの質問に対しては、「人命第一に全力を尽くす」「断固としてテロに屈しない」と繰り返し、明言は避け、グレーゾーンの回答に留まっています。

◆今回の事態は事前に想定できなかったのか?

まず、今回の発端となったエジプト・カイロでの安倍首相による演説内容を踏まえ、もし今回のような事態が起こることを全く想定出来ていなかったのであれば、日本政府側の見積もりの甘さを指摘せざるを得ません。

なぜなら、今回人質となった二人は長らく安否不明でしたが、イスラム国に拘束され、生存している可能性はあったことがまず挙げられます。

もう一つの理由としては、イスラム国をはじめとする武装勢力にとって、人質の転売や、人質交渉を隠れ蓑に周辺国のスポンサーからの資金援助を受けるなど、彼らにとっては人質が極めて貴重な商品であるという事実です。

と同時に、断固として交渉に応じない英米に対しては、公開処刑することで国際世論の非難を向けさせるなど、人質を最大限に活用する傾向があるといえます。

少し厳しい見方をするならば、安倍首相の演説内容は、付け込む機会を待っていた「イスラム国」にとっては格好の材料になってしまったのかもしれません。

◆テロに屈する歴史を二度と繰り返してはならない

では、日本政府はどのような対応を取るべきなのでしょうか。

1977年9月、ダッカで起こった日本赤軍によるハイジャック事件による弱腰の対応が、その後どのような事態を引き起こしたかを、今一度振り返る必要があります。

当時の福田赳夫首相は「人命は地球よりも重い」という言葉と共に、テロリストに屈し、日本赤軍の活動家6人を「超法規的措置」により解放し、600万ドル(当時で16億円)を支払いました。

テロリストの要求に応じてしまった日本で、その後何が起こったでしょうか。

ダッカ事件の1カ月半後には、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致され、その後は大勢の日本人が北朝鮮に連れていかれて、40年近く経つ今でも、多くの拉致被害者は戻らず、解決の糸口はつかめていない状況にあるのです。

もちろん、今回人質となり、拘束されているお二人が感じている苦痛、そしてご家族・知人の皆様の大きな苦しみと悲しみは筆舌に尽くし難いはずでしょう。

しかし、北朝鮮と同様、テロリスト(疑似)国家であるイスラム国に対しては、「テロには絶対に屈しない」という姿勢で望まない限り、結局、更に多くの人々を苦しめる結果となってしまうのです。

◆今回の人質事件から「中庸」とは何かを考えるべき

冒頭でも述べた通り、中東と日本が共有する「中庸が最善である」という伝統的な智慧を、今回の中東歴訪で安倍首相は強調しておりますが、まさに今、この智慧の発揮を日本政府は突き付けられていると言えましょう。

「正義を貫くこと」と「人命を救うこと」。

この二つを両立させる解があるとしたら、「防衛法制の抜本的改正」によって、自衛隊の特殊部隊による邦人救出が実行できる体制、法整備を速やかに行うことでありましょう。

是非とも安倍首相におかれましては、今回の人質交渉への対応ではもちろん、今月末に開会する通常国会においても、あるべき安全保障法制について、批判を恐れずに正しさを追求して頂きたいと切に願います。

【参考文献】
「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」 ロレッタ・ナポリオーニ著

しろとり 良太

執筆者:しろとり 良太

幸福実現党広報本部

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