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真の地方創生としての「リニア新幹線」促進について

文/政務調査会チーフ 小鮒将人

◆世界的なモデルとなった新幹線

新幹線の歴史は、日本の誇りそのものです。

その原型は、すでに昭和15年、運輸省で計画された「弾丸列車」に見ることができます。これは、東京~下関間を9時間でつなぐもので、当時としては、世界最高水準でした。

大東亜戦争のため、計画は、一旦中止となりましたが、昭和39年の東京オリンピック開催の決定に伴い、再びこの弾丸列車構想が復活する形になりました。

実は昭和30年代に入って鉄道は斜陽時代と言われていました。自動車を購入する国民が増え、移動手段として、鉄道が敬遠されていくのではないか、と思われており、実際に鉄道大国であったアメリカでは次第に傾いて行きました。

そうした中、あえて新幹線構想を進めたのは、当時の国鉄総裁であった十河氏、そして技官として技術的な部分で推進した島氏の二人の強烈な個性が大きく影響していたと言われています。多くの反対を押し切り、ついに新幹線を現実のものとしたのです。

この新幹線のスピードは、私たち日本人にはおなじみですが、欧米人から見ると驚異的なスピードのようです。

しかも、数分おきのダイヤを可能なものとして、そして開業以来、死亡事故が一件も起きていないという事で、文字通り日本人の誇りと言えるものです。

この新幹線の影響は、はっきりとしており、全国各地の経済力を見ると、新幹線が通っている地域ととおっていない地域の差は大きくなっています。

例えば、2011年に開業した九州新幹線を見ると、鹿児島県のGDPが、開業の結果、約500億円の効果があった事を見ても明らかです。

来年2015年の春、とうとう北陸新幹線が開業し、東京と金沢を2時間40分で結ぶことになり、大量輸送への道が開かれることになりました。

報道では、こうした新幹線の建設について、「無駄遣い」の代名詞のように捉えられがちですが、実際には地域に大きな経済効果を与えている事が明らかになっています。

◆日本リニア事情

さて、この新幹線に続く高速鉄道として、日本はリニアモーターカーの実用化に成功しました。そして、いよいよ、その建設が始まろうとしています。

10月14日には、国交省がリニア中央新幹線の東京~名古屋間の着工が認可されました。これが完成すると東京~名古屋間がたったの40分という事で、ビジネス通勤圏内にも入ることになります。

言うまでもなくこの技術は、すでに開発されたもので、本来もっと早く着工すべきでした。しかも、開業予定が10年以上先の2027年となっており、東海道新幹線が5年程度で完成した事と比較して、実に長期にわたる建設になります。

この大きな原因は何でしょうか。何といっても「政治の決断」が不足している事です。

まず、どの地域に建設するのか、そして、停車駅をどこにするのか、これらの建設資金は誰が負担するのか。それぞれが自分の利益を主張し、中々結論に至らなかったのです。

そして、新幹線という成功している事業がある中で、どこまでリスクを負うことができるのかという決断にも時間がかかりました。

このように、政治の決断が先送りになる中、最終的に事業者であるJR東海の自己負担によって、建設が進められることになりました。

◆真の地方創生対策、成長戦略としてのリニア建設

安倍総理は、GDP速報に値を元に、「消費増税を1.5年先送り」を決定しました。少なくとも、ここ数年で最も厳しい一年になりそうですが、この原因を作ったのが、安倍総理その人です。

「アベノミクス」は、日本経済の復活を象徴する言葉として知られましたが、実態は、幸福実現党が主張してきた「大胆な金融緩和」を取り入れただけの事です。そして、それ以外の有効な政策がないまま、4月の消費増税によって景気が大きく失速しました。

解散という政治的に大きな決断に目を奪われて、日本人は、11月17日のGDP速報値年率換算「マイナス1.6%」の重さを実感することがないのですが、海外のメディアは明確に「アベノミクス」失敗、「日本経済再び景気後退へ」、と報じています。

幸福実現党の主張が正しかったと同時に、安倍総理の経済政策の失政についても、明確に問われる事になりました。

自民党は、「地方創生」と称して、失われた20年の間、疲弊している地方経済の活性化を標ぼうしています。

しかし、その実態は相変わらず地域への長期展望のないバラマキに終わっており、未来への希望が生まれているとは、到底言える状況ではありません。

今、一つの「地方創生」の柱として、リニア新幹線の整備を強く訴えたいと思います。リニアが実現すると、東京~名古屋が40分、さらに東京~大阪が1時間程度で行き来ができるのです。

現在、大阪市の橋下市長が中心となって「大阪都」構想を主張しています。これは、リニアが開通することで、首都機能が大阪圏までに広がるのです。大きな論争になった「大阪都」ですが、橋下市長には、ぜひリニア推進をお勧め致します。

そして、これは、大阪だけでなく、日本全国の地方にとって再生の原動力になることは間違いありません。一刻も早い着工、開業が望まれるところです。

参考:
『リニアが日本を改造する本当の理由 』市川宏雄著/メディアファクトリー新書
『新幹線をつくった男』 高橋 団吉著/PHP文庫

こぶな 将人

執筆者:こぶな 将人

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