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日本では報道されないドイツの脱原発事情(1)

文/政務調査会チーフ 小鮒将人

◆「原発推進派」に対するマスコミの風当たりは強い

安倍改造内閣の目玉の一人であった小渕経産大臣が政治団体の不透明な収支を巡る問題で、辞任しました。内容を聞く限り、大臣失格は当然であります。

しかし、その一方、小渕前大臣は、「原発推進」を明言し、九州の川内原発などの再稼働を念頭に置いていたと言われています。

報道によると、さる11/8(土)、鹿児島県の伊藤知事は、震災以降初めて、原発の立地県として川内原発の再稼働に同意しました。

さて、2012年10月に行われた衆院鹿児島3区補選では、幸福実現党公認の松澤力候補だけが、川内原発再稼働を訴えました。当時は自民党候補ですら再稼働の主張ができなかった事を考えると、この先見性には大きな評価を受けるべきではないでしょうか。

マスコミでは、まだ原発推進派と目される政治勢力に対する風当たりは強いものの、現実は政府も再稼働への方向をはっきりと示しています。

そうした意味では、日本のさらなる繁栄の為に、今回の小渕前経産大臣のスキャンダルで、原発推進の動きが止まってしまうことを懸念するものです。

◆日本で誤解されているドイツの「エネルギー革命」

よく、「脱原発派」が引き合いに出すのが、ドイツの原発政策です。元々ドイツでは、チェルノブイリの原発事故以来、放射線に対する恐怖が強く、自然エネルギーの研究も進んでいた地域ではありました。

2000年代のシュレーダー政権の時から、脱原発の方向は示されていましたが、2011年の福島原発事故をきっかけとして、メルケル首相が「エネルギー革命」と称する脱原発政策を打ち出すことになりました。概要は以下の通りです。

1、独国内17基の原発のうち、老朽化した8基を停止すると共に、残りの9基についても順次停止していき、2022年までに全廃を目指す。

2、その代替エネルギーとして、太陽光・風力など再生可能エネルギーを推進し、2050年には完全移行を目指す。

3、電力会社に対して、再生可能エネルギーを一定の固定価格で買い取ることを義務付けるFIT制度を導入する。

これらの政策は、当初、環境保全推進の立場から、好意的な反応があり、「日本もドイツに学べ」という論調が強まりました。

しかし、日本で誤解されている事は、ドイツでの原子力発電は暫時減らしていくという事で、現在も稼働しているという事です。

また、エネルギー政策の柱として掲げた、再生可能エネルギーは安定的な供給ができず、ドイツ政府は、石炭を中心とする火力発電を中心に行うことになり、現在はドイツの数か所で新規に「火力発電所」の建設が急ピッチで進んでいるのです。

以上の結果、2013年のドイツにおけるエネルギー割合の暫定値は、以下のようになっています。

原子力 15%
石炭 20%
褐炭 25%
再生可能エネ 24%
天然ガス 10%
その他 6%

少なくとも、ドイツは、まだ原発稼働中で、日本の即時停止とした対応が、いかに極端なものであるかが分かります。

次回、ドイツの電力事情にもう少しメスを入れ、日本が学ぶべき教訓を明らかにします。(次回は、明日配信)

こぶな 将人

執筆者:こぶな 将人

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