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戦後70周年に向けて力強い外交を行うための体制を整備せよ

文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ

◆朝日が誤報を認めても残る歴史問題

朝日新聞が従軍慰安婦報道の一部誤りを認めましたが、誤報を長年撤回しなかったことによって損なわれたものは計り知れません。

実際に、慰安婦を「性奴隷」と規定した1996年の国連人権委員会「クマラスワミ報告」や2007年の米下院対日決議へと進みました。

朝日が誤報を認めても、国際社会での問題は残ったままです。米中韓の思惑が複雑に絡みあっている歴史問題をひっくり返すのは容易なことではありません。

来年は、戦後70周年を迎えます。米国では、日本と戦った民主党政権が続き、第2の「レイプ・オブ・南京」とも言える反日映画「アンブロークン」(アンジェリーナ・ジョリー監督)がアカデミー賞を狙っています。

また、7月に習近平国家主席が訪韓した際に、中韓は歴史問題で共闘することを宣言するなど、日本にとって厳しい布石が打たれました。

今、国家と国家がせめぎ合う外交の世界は、情報戦の時代にあります。こうした中で、日本が世界の信頼を勝ち取り、誇りを取り戻すために何を為すべきなのでしょうか。

歴史問題解決に向けて、政府は新しい談話や声明の発表を目指すべきですが、そのための事前準備と他国を説得する理論とメッセージ性を兼ね備えた外交力が問われます。

◆国際世論を味方にする「メッセージ」の発信

国際世論を味方につけ、情報戦を制するためには、国際世論に大きな影響を与えている「メガメディア」と呼ばれる米国3大メディア(ABC、CBS、NBC)やCNN、英BBCなどをいかに活用するかにかかっています。

そのために、メガメディアが好みそうなメッセージを発信できるかが重要になってきます。

発信するメッセージには、宣伝色の強いプロパガンダではなく、信憑性や公平、中立、国際社会に通用する倫理や道義性が求められています。

つまり、ポイントは発信するメッセージが国際社会の価値観の潮流に合っているものであるかどうかということです。

といっても、決して、迎合するのではなく、新しい価値観を世界の先頭に立って発信していくぐらいでなければ、情報戦の時代を勝ち抜いていくことはできません。

実際に、中国はCCTVなどの国際放送に約8135億円(09年)の予算を使っていることに対して、日本のNHK国際放送は、約158億円(12年)とその規模は比べものになりません。

しかし、中国の対外発信は、量は多いが、都合が悪い情報は流さないなど言論の自由がなく、政府の宣伝機関というイメージが強いのも事実です。

やはり、日本は国際世論に合った「質」で勝負しなければなりません。

◆外交を根底で支える新しい大学の必要性

国際世論を味方にする「質」の高いメッセージを発信するといっても難しいものがあります。

なぜなら、国際世論に影響を与えている「メガメディア」の価値観の基準が第二次世界大戦で勝った連合国の戦勝史観に基づいているからなのです。この価値観を変えない限り、日本は情報戦でも外交でも不利な立場に置かれたままです。

こうした歴史観について議論することは、国益がぶつかり合う政府間では限界があります。そのため、政府から距離を置いた研究機関である大学やシンクタンクの存在が必要不可欠になってきます。

自由な立場から研究し、アイデアを提案することで政治家やメディアの発信の論理的な裏打ちを行ったり、外交政策に活かすことができます。

例えば、従軍慰安婦問題で強制連行があったかどうかという狭義の理論は国際社会では理解されず、人権問題として捉えられています。

これに対して、どのような理論で国際世論を説得することができるかを研究し、政府に提言する大学があれば、日本の外交はもう一段強くなるのではないでしょうか。

しかし、日本の大学や学会の現状は、学問の自由があるにも関わらず、研究内容やその成果を自由に発表する場になっているとは言えません。

例えば、左翼史観が強く残る歴史学会においては学問の研究が止まったままです。近年、戦時中の米国極秘文書が公開されるようになり、これまで憶測でしかなかったルーズベルトの側近が共産党のスパイだったという噂が事実として判明するようになりました。

英国でも同じような文書が出始め、日本が戦争に向かっていく時期の外交史の見直しが必要になっています。

日本にとって、重要な歴史の転換点であるにも関わらず、このような研究が学会で積極的に行われているわけではありません。そのような今までなかった新しい研究に挑んでいくことが日本の外交の幅を広げることにもなります。

また、研究者自らが世界に向けて、英語で研究内容を発信したり、学生などが欧米やアジアの親日国の大学との交流や共同研究を通じて人脈やネットワークをつくることは、将来の日本外交の厚みになっていきます。

さらに、世界の国々が抱える貧困や環境問題などの課題を解決するための未来産業の研究を大学で行うことも日本と世界の未来を明るくしていくのです。

◆政府レベルで世界に貢献できる体制づくりを

民間と協力しながらも政府は政府として、外交の基礎を整えなければなりません。

日本が今ひとつ世界から信頼されていない大きな理由は、大国でありながら軍事行動が伴わないことにあります。
いくら首相が国連で安保理改革や常任理事国入りを訴えても、お金を出すだけの小切手外交に他国からは「結局、日本は何もできないんでしょ」と冷めた目で見られているのが現実です。

日本が世界から信頼を得るためにも、集団的自衛権の行使容認、そして、憲法9条改正など大国として当たり前に自国を守り、世界に貢献できる法整備が必要なのです。

外交の基礎は軍事力であり、抑止力をもつことでしっかりとした言論戦や対話ができるのです。戦争の前に外交があり、外交の前に情報戦があります。

情報戦に勝つためには、世界の国々にとって「日本は重要な国であり、信頼できる国である」と思わせなければなりません。そのために、有言実行と真実の発信が不可欠です。

日本と世界の平和と繁栄を築くために、憲法9条の改正と新しい大学の創設が必要だと信じるものです。それが、戦後70周年を迎えるにあたり、日本の誇りを取り戻すために必要な戦略なのです。

参考文献: 『外交』vol.27
東京財団 『安倍外交への15の視点』

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

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