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中東問題でも存在感を示せる日本へ

文/徳島県本部副代表 小松由佳

◆「イスラム国」への本格的空爆開始

米オバマ政権は、イラクとシリアで勢力を広げるイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の打倒を目指し、8月8日からイラク内の同組織拠点などへの空爆を行ってきました。

米政府は当初、空爆の目的を自国民や避難民の保護に限っていましたが、今月10日に「イスラム国」打倒を最終目標とする新戦略を示し、「イスラム国」と対決するイラク政府軍の支援や、「イスラム国」の本拠地であるシリアも空爆対象に含めることを表明しました。

そして、14・15日、米軍はバクダッド南西部とイラク北部で計2回の空爆を実施し、8月8日以来の空爆は計162回となりました。米調査機関ピュー・リサーチセンターが15日に発表した米国内世論調査では、回答者の53%がオバマ政権の軍事行動を支持しています。

オバマ大統領は、地上部隊の派遣は否定していますが、米制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は16日、「脅威が米国に迫れば、そのときは大統領に進言する。進言には、地上部隊の使用も含む可能性がある」と議会で証言しました。この発言が波紋を広げていますが、自国を守るためにあらゆる可能性を考慮すること自体は、当然のことでしょう。

◆国際社会の協力体制

各国も協力体制を築きつつあり、9月初めに同問題についての閣僚級会合が開かれ、米、英、仏、独、カナダ、オーストラリア、トルコ、イタリア、ポーランド、デンマークの10カ国を中心に、同月下旬の国連総会までに「有志国連合」を発足させる方針を確認しました。

15日には、パリでも国際会議が開かれ、シリアやイランは不参加だったものの、ロシアや中国をも含む約30カ国・機関の外相らが参加し、イラク政府を支援すべく「適切な軍事支援を含め、必要なすべての措置をとる」との共同声明を発表しました。

イラク上空で偵察飛行を行っているフランスや、UAEへの戦闘機派遣を発表した英国やオーストラリアなども、軍事介入を行う可能性が出ていますし、紛争当事国への武器供与を自粛してきたドイツすらも、長年の外交方針を転換し、イラク北部で「イスラム国」と戦うクルド自治政府への武器供与を表明しています。

◆シリア問題先延ばしのツケ

このように、イラクでの作戦に対する協力体制は整い始めていますが、米国が同様に空爆準備を進めるシリアについては足並みが乱れ、同声明でも言及されませんでした。

「イスラム国」の壊滅のみを目指すなら、イラク同様、シリアの政府軍と協力するのが効果的ですが、米欧や周辺国の大半は、独裁下で自国民を弾圧・虐殺してきたアサド政権とは対立してきましたし、当然ながら協力するわけにはいきません。

かといって、シリア内の穏健派反政府勢力は、米軍と協力して戦えるほど有力な勢力にはなっていません。オバマ政権はこれまで、内戦の火に油を注ぐとして、彼らと距離を置いてきましたが、シリア問題を放置してきたツケが回ってきたと言わざるを得ません。

そこで、米政府は、空爆の準備と並行して、これら穏健派勢力への武器供与や訓練も急いでおり、今後1年間で約5億ドルを投じる計画を立て、議会に早期承認を求めています。サウジアラビアなどの湾岸諸国も、これらの勢力への資金供与を行うと見られています。

◆より一層の国際貢献を目指して

一方、日本は、集団的自衛権についての7月1日の閣議決定においても、「武力の行使」を認めていない現行憲法の下では、他国の「武力の行使との一体化」が起きないよう、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」での支援活動は、実施しないことを定めています。

菅官房長官も今月16日、「イラク政府や各国政府によるテロとの戦いを支持したい」としつつも、「日本としては、軍事行動はできないから、人道支援を実施するほかない」と述べました。政府は、6月までに行った計780万ドルの緊急無償資金協力に加え、新たに1千万ドルを大幅に上回る資金の拠出方針を固めましたが、使途は人道支援に限るとしています。

こうした中、日本時間の17日には国連総会が開幕し、安倍首相も出席を予定していますが、24日には、首脳級の安全保障理事会が5年ぶりに開かれ、オバマ大統領が議長を務める予定で、最大のテーマは「イスラム国」対策になると見られています。

資金援助であれば、米政府も12日、シリア近隣諸国への約5億ドルの人道支援を表明しています。「テロとの戦い」という国際社会の課題において、日本は十分な役割を果たしていると言えるでしょうか。「イスラム国」には、日本人も拘束されており、日本は当事者でもあります。やはり、先の閣議決定に満足することなく、「世界の警察官」たる有志国連合に加わるべく、憲法9条改正に向けたさらなる世論喚起が必要です。

ましてや日本は、来年で創設70周年となる国連改革に向け、安保理常任理事国入りを目指しています。そうであるならば、集団軍事行動を決定する権限を持つ安保理のメンバーとしてふさわしいだけの資格を備えていると、国際社会に示さなくてはならないのです。

小松 由佳

執筆者:小松 由佳

HS政経塾第2期卒塾生 幸福実現党徳島県本部副代表

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