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米国を舞台に繰り広げられる広報外交

文/HS政経塾2期生 服部まさみ

◆中韓首相、歴史認識で連携確認

今月10日、中韓の首相が中国で会談した際に、「日本は侵略の歴史を反省しなければならない。両国の共通認識の下で、これまでのように以心伝心で対応していこう」と歴史認識で連携を確認したようです。(4/11産経)

このように中韓が連携して、日本のネガティブキャンペーンを行っています。こうした情報戦に対して、真実を発信するための外交戦略として広報外交(パブリック・ディプロマシー)が必要です。

これは伝統的な「政府対政府」の外交とは異なり、広報や文化交流を通じて民間とも連携しながら、外国の国民や世論に直接働きかける「対市民外交」のことで近年、世界中で注目されています。

◆中韓が米国を舞台に情報戦を仕掛けている理由

外交政策において、ある国が重要だから、その国に対してだけ広報外交を行えばよいというわけではありません。

例えば、イギリスの世論を動かすには、米国のように世界に影響力を持つ国や国際世論全般に働きかけることが有力な面があります。

中国や韓国が米国を舞台に情報戦を仕掛けている理由は、米国のメディアは、全世界に情報を発信する力を持ち、「世界標準」として認識されるほどに影響力をもつからです。だから、各国が国家戦略として、巨額の予算を米国に対する広報外交に充てているのです。 
   
ワシントンD.C.では「世界の権力の要」として、各国の利益や各団体の要望を満たすために日夜、激しい競争が行われています。

◆ワシントンD.C.で行われている広報外交

米国のライシャワー東アジア研究所所長のケント・カルダー氏によると、各国がワシントンD.C.で行っている広報外交は大きく分けて5つあるといいます。

(1)政策研究 アジェンダセッティング(課題設定)・フォーラム

この分野で注目されているのが、韓国のKEI(Korea Economic Institute)という機関です。間接的に韓国政府やNGOの支援も受けながら、講演会を開催し、その内容をインターネットを使って世界に生中継しています。

以前、「ジャパン・エコノミック・インスティチュート(Japan Economic Institute)」という機関があり、日米貿易摩擦の解決に尽力を尽くし、大きな成果をあげていましたが、01年に閉鎖されてしまいました。

(2)アイディアクリエーション(アイディア形成)・フォーラム

これは、研究者や世界各国の大学間などのアカデミックな交流を通じて、グローバルな問題解決に向けてアイディアを交換し合うことが目的です。

米国にドイツをはじめとするヨーロッパ諸国から学者を招聘して、米国の研究者たちと、移民問題など双方にとって関心の高い課題について対話の場を設けています。また、米国の大学も、こうしたプログラムを通じて活発な活動を行っています。

(3)メディア・イノベータ―

中国の国際放送を行っているCCBがワシントンD.C.で積極的な活動を展開しています。特に注目されているのが、中国は社員の8割を現地の米国人を雇用して、ワシントンD.C.から世界に向けて情報を発信していることです。

こうした革新的な試みを、日本はもっと取り入れるべきです。

(4)文化交流

特にフランスやドイツが積極的に活動を行っています。また、最近ではエスニックサポートSGO(民族的少数派支援のための機関)という非政府機関が注目されています。

例えば、中国はワシントンの大使館の中に、主に中国系アメリカ人のための業務を行う局を設置して、中国系アメリカ人との関係を積極的に築いています。

(5)政党に関わる機関

各国の政党や政治団体がNPOなどの民間団体をワシントンD.C.に設置し、その民間団体を通じて情報収集や人材育成を行っています。この分野ではドイツが先駆者として注目されています。

例えば、フリードリヒ・エーベルト財団はドイツ社会民主党と関係があり、党の政策に基づいたシンポジウムを行ったり、米国やドイツの指導者になるような若い世代の育成に力を入れています。

政党や政治団体の支援を受けてドイツと世界の対話を促進する役割を果たしています。

◆今こそ官民を超えた「オール・ジャパン」の取り組みを

以上、ワシントンD.C.を舞台に各国が米国の世論を味方につけるための具体的な活動を紹介しました。残念ながら日本は、このような競争に全く参加できていません。

ヒト、モノ、カネが国境を超え、情報がインターネットによって世界中を駆け巡るグローバル化した時代において、政府だけが国際世論に働きかけることには限界があります。

そのため、各国の民間のシンクタンクやNPO、大学が積極的に国際世論に働きかけ、政府は間接的に支援するというスタイルに変わりつつあります。

今こそ、政府も民間も「オール・ジャパン」で一体となって活動していくことが必要なのではないでしょうか。幸福実現党は日本の誇りを取り戻すべく、積極的な情報発信を行って参ります。

参考:ケント・カルダー氏基調講演:国際シンポジウム『好かれる国の条件~パブリック・ディプロマシーの時代』2013年11月5日 日本プレスセンタービル

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

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