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「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第2回】

文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝

《日本海域に眠る莫大な海洋資源》

前回、総論として、日本は「国連海洋法条約」の成立によって、広大な海域を持つ「海洋大国」としての権益を手にしたことを明らかにしました。今回の2回目は、日本海などに眠る海洋資源を詳しく紹介します。

◆尖閣諸島周辺の海底油田

この日本の領海及び排他的経済水域内には、海底油田などの膨大な天然資源が存在しています。よく知られているのが、尖閣諸島周辺の海底油田の存在の可能性です。

1969年に国連アジア極東経済委員会は、沖縄県の尖閣諸島近海の海底に、膨大な石油が埋蔵されている可能性を報告しました。その推定埋蔵量はイラクやクエートの石油埋蔵量に匹敵する約1000億バレルを超えると試算されています。

現在の原油価格の1バレルで100ドル前後で計算すれば、埋蔵量は10兆ドル分、現在の1ドル100円換算では1000兆円となります。

また、東シナ海の中国や韓国の延長線上の大陸棚にも、サウジアラビアの10倍近い天然ガスと石油が埋蔵されているという報告もあります。

◆海底に眠る「第四のエネルギー」と「鉱物資源」

近年は、「人類の第四のエネルギー」といわれるメタンハイドレート、レアメタルやレアアースなどの希少資源の宝庫である「海底熱水鉱床」や「コバルト・リッチ・クラスト」、「レアアース資源泥」の発見が相次ぎ、脚光を浴びています。

メタンハイドレートとは、主成分が天然ガスと同じメタンであり、海底の圧力と冷温によって氷状になったものです。日本近海には世界有数のメタンハイドレートが埋蔵され、四国、九州、西日本地方の南側の南海トラフ、北海道周辺と新潟県沖、南西諸島沖などに存在しています。

通商産業省の試算によると、メタンハイドレートは日本の排他的経済水域や大陸棚の海底には約7兆3500億立方メートル、日本の天然ガス使用量の約100年分のメタンハイドレートが存在するといいます。

メタンハイドレートは、燃焼によって生じる二酸化炭素が、石炭や石油、天然ガスと比較して少なく、環境に負担が少ない第四のエネルギーとして注目を集めています。

現在、日本においては2001年に設立された官民学共同の「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」(通称:MH21) が中心となって、メタンハイドレートの調査、発掘技術の開発が進められています。

◆漁業資源の宝庫

 
さらに日本の周辺水域が含まれる太平洋北西部の海域は、「世界三大漁場」の一つであり、世界の漁業生産量の2割を占める約2000万トンが漁獲されている極めて豊かな海です。

水産庁によると、特に日本の排他的経済水域内の海域は、世界の海の中でも生物の多様性が極めて高い漁業資源の宝庫です。

現在、日本の漁業は、漁獲量の減少、漁業従事者の高齢化と後継者不足、消費者の魚離れ等で“衰退”が指摘されて久しくなります。

しかし、ノルウェーやニュージーランド、アイスランドなどでは、徹底した資源管理が行われており、その結果、漁獲高が増え、持続可能で生産性の高い漁業が実現しています。 

三重大学生物資源学部の勝川俊雄准教授は、「魚や貝などの生物資源は、子を産んで再生産するので、十分な親魚を残しておけば、半永久的に利用できる」「(日本がノルウェーなどのように)国がやるべき漁獲規制をすれば、日本の漁業は必ず復活する。」と断言しています。

※『惨憺たる日本の漁業 実は先進国では成長産業』 勝川俊雄 三重大学生物資源学部准教授 WEDGEInfinity(2013年8月19日)
  
今後世界は人口100億人時代に向けて、いよいよ食料問題が本格化していくでしょう。しかし世界有数の豊かな漁業資源を誇る海を日本は持っています。戦略的に活用し、育むことで、国内の食料を賄うだけでなく、海外に輸出する新産業へと発展させることも、十分可能であると言えます。

次回3回目は、その日本の資源を狙う中国について言及します。

やない 筆勝

執筆者:やない 筆勝

幸福実現党総務会長兼出版局長

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