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TPPに向け、日本農業の大胆な構造改革を!

「聖域」議論に終始するTPP議論

政府は「『聖域なき関税撤廃』という環太平洋連携協定(TPP)の理念が、交渉次第では『聖域ありき(例外ありき)』である」ということをTPP交渉参加の大義名分としています。

昨年末の総選挙で当選した295人の自民党議員の内、約70%の205人が選挙公約で「TPP参加反対」を表明していた以上、「聖域を守ること」は彼らの政治生命を確保するためにも至上命題であるのでしょう。

実際、政府のTPP参加表明後、日本のマスコミの関心の的はもっぱら、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料作物5項目の聖域を守れるかどうかの一点に絞られています。

しかし、これら5項目だけで500品目を超えており、TPPが従来の貿易協定を超えた高度な自由化を目指している以上、5項目全ての聖域化が困難であることは言わずもがなです。

米通商代表部高官は26日、共同通信のインタビューに応じ、TPP交渉合流をめぐり「日本には高水準の貿易自由化を耐え抜く決意があると確信している」と述べ、コメなど農産物の重要5品目を関税撤廃の例外とする「聖域化」を貫こうとする日本側をけん制しています。

日本は7月下旬に開催する方向の交渉会合から合流する構えですが、高官の一連の発言で、日本が重要農産品を関税撤廃の例外とする主張を通すのは容易でないことが浮き彫りとなっています。(4/27 河北新報社)

林芳正農水大臣は「聖域が認められないなら交渉から離脱覚悟だ」と発言するなど、交渉国向け、国内向けに二枚舌よろしく閣内バラバラな発言を行っていますが、今後の交渉は、まさしく綱渡りだと言えましょう。

構造改革で農業を強化したニュージーランド

世界最大の乳製品輸出国であるニュージーランドは、そもそも、いかにして今日の地位を築いたのでしょうか?

ニュージーランドの酪農・乳業の今日の発展は、1980年代初めの「経済、農業の自由化」と、2001年の大規模酪農・乳業組合「フォンテラ」誕生の「二つの構造改革」によってもたらされたと言われています。

1940年以降、政府は酪農を中心とした農業部門に手厚い補助金をつけ、その額は農産物販売額の30%に及びました。

しかし、72年の英国のEC加盟を機にニュージーランドは農産物輸出の中心市場を失い、その後のオイルショックによる国内のインフレ、財政赤字の拡大等、経済状況の悪化に悩むこととなりました。

1984年に政権についた労働党は「ロジャーノミクス」と呼ばれる自由主義と財政緊縮による大胆な改革を実施しました。

これにより、農業部門は補助金が全廃されるなど、これまでの様々な政府支援が無くなりました。

その後、農家の中には補助金に頼らず、コストの削減や、市場に対応した製品づくり、環境を重視した農業への取組みが生まれ、その取組みは徐々に拡大し、酪農を含め、農業のあらゆる分野に広がっていきました。

こうした取組みは「農家の意識変化と経営努力を促がし、競争力が強化され、農家はさらに強くなっていった」と言われています。(2010/3 「農中総研調査と情報」第17号)

日本農業の大胆な構造改革を断行せよ!

日本とニュージーランドでは酪農を取り巻く環境、諸条件の違いがありますが、補助金を全廃し、自由競争を促すことで、農家が自立し、国際競争力が高まったという事実に学ぶべきところが多いのではないでしょうか。

そもそも、TPPにおいては「関税の撤廃・削減」は一過程に過ぎず、TPPの目指すところは、世界共通のルールを作り、グローバルな国際市場において自由競争を活性化していくことにあり、政府は農業の国際競争力向上にこそ注力すべきです。

今年1月、農林水産省が「攻めの農林水産業推進本部」を設置。「担い手への農地集積や耕作放棄地の解消を加速化し、法人経営、大規模家族経営、集落営農、企業等の多様な担い手による農地のフル活用を目指す」など、大胆な農業改革が掲げられました。(4/23 農林水産省 第7回産業競争力会議)

今こそ、政府は「聖域化」の議論に終始することなく、農業に関わる国内の規制を撤廃すると共に、大胆に保護農政を見直し、農業の自由化・大規模化を促し、農業の真なる自立、競争力強化を目指した構造改革を断行すべきです。(文責・岐阜県参議院選挙区代表加納有輝彦)

加納 有輝彦

執筆者:加納 有輝彦

岐阜県本部政調会長

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