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経済成長して財政破綻するのか?

財務省の罠は健在

2012年末の政権交代以後、株式市場が依然として好調を維持しています。

こうしたさなかでアベノミクスに対する各種批判が出ていますが、注意を要すると思えるのが「経済成長をしたら財政破綻をする」という論理です。

普通に考えれば、経済成長をすれば税収は増えて財政は改善すると思われますが、「財務省経済学」は真逆の論理を貫いています。

例えば、財務省が毎年予算の作成時に国会に提出する資料の中に「後年度歳出・歳入」への影響試算」と呼ばれるものがあります。

2013年3月6日時点で確認できる財務省HP掲載資料によれば(2012年1月に発表)、名目成長率が1%上昇すると、2013年、14年の税収は0.5、1.1兆円ずつ増えるとされています。

一方、金利が1%上昇した場合は、国債費の増加は、2013年に1兆円、14年には2.4兆円とされているのです。→http://bit.ly/weX3jV

つまり、財務省は意図的に税収増よりも国債費増を強調した資料を国会に提出して、「成長すれば財政破綻をする」という印象操作をしているわけです。

そして、もう一つ意外にも説得力を持っているのが、国債累積残高600兆円です。例えば、全てが1年で償還できる国債だと仮定すると、金利が1%上昇は6兆円の金利負担増となると煽ることも可能なのです(銀行・証券系のアナリストに多い主張)。

このように、とにかく成長=財政破綻の論理が「財務省経済学」に存在し、増税を正当化する論理として使われているのです。

税収増は時間が経つにつれて大きくなる

しかしながら、継続して金利が上昇することを別にすれば、一旦金利上昇が織り込まれた後の利払費増加はありません。むしろ、時間が経つにつれて税収増が追いかけてきます(名目成長率が1%高まるとどれくらい税収に影響を与えるかを示す「税収弾性値」という手法が有益)。

多少技術的ですが、学習院大学の岩田教授の著作を借りて議論を進めてみましょう。

岩田教授の著書『ユーロ危機と超円高恐慌』第6章によれば、1995年から2010年までの税収弾性値は2.3%から3.4%だとします。まず高い方の数値3.4を使い、名目成長率を4%で計算した税収増は初年度に5.6兆円、次年度に6.5兆円増加するとしています。単純計算すれば、初年度だけでも1%の成長で1.4兆円増えます。この数値は、財務省の出した数値よりも高く、且つ国債費増加よりも高くなるので、財政破綻するにはあまりにも都合の悪い数字になることは一目瞭然でありましょう。

金利上昇は事実だが過大評価するのは問題あり

経済が成長することで金利が上昇することはあり得ます。言い換えれば、累積された600兆円を超える国債費の利払費増大も実際に起こります。ただ、その反面株価の上昇や不動産価格の上昇も起こる可能性があるのです。

日本の金融機関は国債の8割以上を所有していると言われ、金利上昇=国債価格の下落によって損失が生じるのは事実ですが、金融機関は不動産や株式も所有しています。こうした資産の上昇が国債価格下落を上回るならば、銀行のバランスシートの毀損が拡大することはありません。同時に、国債から株式へのポートフォリオ構成を変えることによってバランスシートが改善する可能性もあります。同時に、各企業も株式や不動産を所有しているので、株価上昇や不動産価格上昇によって投資や借り入れがしやすい環境が出来上がります。

従って、一面的な損失だけを過大評価し、株式や不動産上昇による効果を過小評価することは公正を欠いた議論だと言わざるを得ません。経済は生き物なので実際の効果や成果は誰にも分かりませんが、一面的な事実だけを捉えて財政破綻を煽ることには同意できません。

経済成長は、税収の増加だけではなく、雇用の創出や投資の増加をもたらします。その結果、財政赤字を減らすことができ、予算編成の段階で国債発行額を圧縮できます。こうした当たり前の議論がなりを潜め、財政破綻論が闊歩することに、現在の経済政策の限界があると感じます。技術的な手法と増税を正当化する論理が先鋭化され、「いかにしたら日本経済がよくなるのか」というマインドや発信が弱すぎます。

経済成長は、財政収支の改善から始まり少子高齢化対策に至るまで、多くの問題解決に不可欠です。成長や繁栄を肯定するマインドこそ、今、政策立案者に強く求めらているのではないでしょうか。
(文責:中野雄太)

中野 雄太

執筆者:中野 雄太

幸福実現党 静岡県本部幹事長

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