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中国海軍の太平洋進出の真意とは?

先月31日、中国海軍の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過し、太平洋方面に進出したことが報道されました。

今回は、太平洋進出後の中国艦隊の動きとその狙いについて深く知るため、日本のマスコミだけでなく、中国軍の機関紙『解放軍報』から読み解いてみたいと思います。

激増する中国海軍の「第一列島線突破演習」

昨年来、中国海軍による第一列島線突破演習は増加の一途をたどっていますが、今回、宮古海峡を突破したのは、北海艦隊に所属する「青島」「烟台」「塩城」の三隻の軍艦からなる「連合機動編隊」です。

この編隊指揮官は演習について「一次出島鎖(注:第一列島線の事)遠航訓練」と称しており、演習の内容が「第一列島線の突破」と、「遠海での訓練」を強く意識したものであることが伺われます。(1/31『解放軍報』「北海艦隊連合機動編隊離港新年度首次出島鎖遠海訓練始動」)

さらに2月1日付の解放軍報3面には「穿越宮古海峡」というヘッドラインが踊り、日本の南西諸島防衛に突破口を「穿(うが)った」という印象を与えているほか、記事では「宮古海峡は太平洋に出るための一条の理想的な国際水道だ」という編隊参謀長の発言を伝えています。

また、宮古海峡は「国際水道」であり、「艦艇・航空機の通行は自由」という主張を掲載していることから、尖閣どころか、中国は宮古海峡を「理想的な通り道」として支配下に置く動きを進めていることが分かります。(2/1『解放軍報』「穿越宮古海峡」)

太平洋進出も「海洋権益」とみなす中国

なお、昨年行われた中国共産党の第18回党大会の結果、胡錦濤主席によって「断固として海洋権益を守る」方針が示されたことが知られていますが、同編隊参謀長は、胡錦濤主席の「海洋権益」発言に触れながら「第一列島線の突破」が海洋権益維持のために重要であることを記者に訴えています。

このことから、中国が維持すべき「海洋権益」とは、「尖閣諸島」のみならず、「第一列島線の突破と太平洋への進出」も含まれるという実態が見えてきます。(同上)

演習の目的は「中国版GPS」の軍事運用試験にあった!

さらに興味深いのは、この艦隊が「中国版GPS」(北斗衛星)を使用していたという事実です。

記事によれば、今回の演習に参加した軍艦は「中国版GPS」とリンクする「情報化」の改造が行われており、演習自体も「中国版GPS」を実際に軍事目的に運用することが狙いだったことが示されています。

例えば、「中国版GPS」独自のサービスである位置情報付きショートメール機能を利用し、軍艦同士の通信を飛躍的に効率化させたことが紹介されています。(2/4『解放軍報』HP「北海艦隊使用北斗衛星導航系提昇戦闘力」)

射撃用レーダー照射事件との関係は?――私はこう考える

なお、2月6日の朝刊全紙で特集が組まれていた、中国海軍の軍艦による海上自衛隊の護衛艦への「射撃用レーダー照射事件」との関連性ですが、2月6日付の読売新聞夕刊では、レーダー照射事件を起こしたのは尖閣諸島周辺で日本とにらみ合いを続ける中国公船を護衛していた軍艦であったと報じており、北海艦隊と直接の関連はないと見られています。(2月6日現在)

しかし、レーダー照射に関して日本政府の発表から一晩経っても中国政府の反応はなく、中国の外務省も「報道で知った」とコメントするばかりである点から、共産党と中国軍の間で何らかの問題が生じている可能性もあります。

これは私見ですが、「中国版GPSの軍事運用試験という重大な任務を背負った北海艦隊の第一列島線突破を妨害されないよう、中国軍が共産党を無視して威嚇行為を行わせた」可能性はあり得ると思います。

尖閣周辺でトラブルを起こすことで、日本の目を北海艦隊から尖閣諸島に引きつけようとしたということです。

一番の問題は、日本政府の受動的対応にあり!

ただ、射撃レーダー照射事件の背景が「尖閣」にあるにせよ、「太平洋への進出」にあるにせよ、本質的な問題は、中国との摩擦を恐れ、「極めて遺憾」とその場しのぎの対応を続けてきた日本政府自身の態度にあると言えます。

詳細は、2月6日、矢内筆勝党首よりマスコミリリースされた緊急声明【中国海軍艦艇によるレーダー照射事案を受けて】をご参照ください。⇒http://www.hr-party.jp/new/2013/34835.html

太平洋への進出、そしてGPSを中心とした通常軍の運用を目指す中国に対して、我が国も衛星破壊兵器や、巡航ミサイルを発射可能な潜水艦を開発するなど、何らかの対抗措置を取るべきです。
(文責・HS政経塾一期生 彦川太志)

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

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