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安倍政権が今国会で「道州制基本法」を提出へ――「国家解体」の危険性

自民党が今国会で「道州制基本法」を提出へ

安倍晋三首相は31日の衆院本会議で、道州制の導入を定める「道州制基本法」の早期制定を目指す考えを示すと共に、「早期制定を目指して議論を行う与党と連携を深めて取り組む」と明言しました。(1/31 東京「首相、道州制法の早期制定目指す」)

安倍首相は積極的な「道州制推進論者」として知られており、今通常国会に「道州制基本法案」を議員立法で提出する方針です。(1/11 産経「自民、道州制基本法案を来年度予算成立後に提出へ」)

「道州制基本法案」では、理念や手続きを規定し、30人以内の有識者らで構成する「道州制国民会議」を内閣府に設け、3年以内に区割りや市町村の役割などをまとめ、首相に答申することとなっています。

道州制は「琉球独立」への道

道州制とは、都道府県を廃止し、全国を10程度の道や州に再編するものです。

自民党の「道州制基本法(案)」には、その区割りは明記されていないものの、北海道、東北、北関東、東京、南関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄という区割りが想定されています。

東京を単独にするのか、中部を東海と北陸に分けるのか、中国と四国を統合するのか等、瑣末な議論はあるものの、沖縄が単独で州として設定されことは確実と見られています。

内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会が発表した答申では、「北海道及び沖縄県については、その地理的特性、歴史的事情等に鑑み、一の道県の区域のみをもって道州を設置することも考えられる」とあります。(2006/2/28 地方制度調査会「道州制のあり方に関する答申について」)

更に、2008年の自民党の道州制推進本部(谷垣禎一本部長)と道州制推進委員会(佐田玄一郎委員長)が合同で示した道州ブロックの区割り4案では、沖縄は4案いずれも単独州に設定されています。(2008/5/30 琉球新報「道州制、4案とも沖縄単独州」)

「地域主権」と「道州制」によって、沖縄州に「主権」が分譲されれば、沖縄州は強力な自治権限を獲得すると共に、「琉球独立」運動と一体となって、沖縄の日本からの独立に拍車をかけることになるでしょう。

そもそも、「沖縄独立」を最も強く願っているのは中国です。

矢内筆勝党首も、中国が「琉球独立」運動の手助けをし、米軍が撤退した後には人民解放軍が進駐し、中国の「琉球自治区」として統治しようと画策していることを指摘しています。(⇒「琉球独立運動」の危険性

尖閣・沖縄に「国難」が迫る最中、こうした「国家解体」に繋がりかねない「道州制」は極めて危険性が高いと言えます。

地域間格差が激しくなる「道州制」

また、道州制は、地方への「課税自主権の付与」を掲げています。

一見、国から地方への大幅な税源移譲は、地方にとって「得」になりそうに見えます。

確かに、首都圏などの一部の大都市は「得」するでしょう。しかし、地方の多くの都市が「損」することは明らかです。

国家は国税の一定割合を「地方交付金」として、地方自治体の財政状況に応じて分配しています。これは、地方の財政状況を平準化し、「地域間格差」を調整するための機能を有しています。

普通交付税の交付を受けていない「不交付団体」は年々減少傾向にあり、平成24年度は1都54市町村に過ぎません。(総務省「平成24年度不交付団体の状況」)

すなわち、多くの市町村が「地方交付金」によって財政が賄われているのですが、地方への税源移譲がなされてしまえば、「税の再分配機能」が失われ、「豊かな自治体はより豊かに、貧しい自治体はより貧しく」なります。

全国町村会も「道州制」導入反対に向け、反対攻勢を強める行動計画をまとめるなど、波紋が広がっています。(1/3 信濃毎日「全国町村会、『道州制』導入反対で行動計画」)

「国家解体」に繋がる「道州制」

また、「道州制」や「地域主権」の下では、国家レベルの外交・安全保障政策が遂行できなくなる危険性が非常に強くなります。

例えば、沖縄州が「米軍基地の退去」「自衛隊基地の退去」を決定すれば、日本の国防機能が弱体化することは避けられません。

また、国家の機能が分散されてしまえば、大規模災害があった際、単独の道州で対応せざるを得ず、迅速かつ大規模な救援活動が取れなくなることも懸念されています。

そもそも、「主権理論」を確立した中世フランスの政治思想家ボダン(Jean Bodin)は、「主権は最高にして唯一、国家の絶対的かつ恒久的、不可分にして不可譲という属性を持つ」と述べています。(堀江湛著『政治学・行政学の基礎知識』一藝社,2007)

安倍首相は「主権を分割する」という近代国家、明治維新に逆行する「道州制」「地域主権」の危険性を知り、「道州制基本法」提出を取り止めるべきです。
(文責・黒川白雲)

黒川 白雲

執筆者:黒川 白雲

前・政務調査会長

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