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中国の防空識別圏問題への一考察(1)

◆中国の非常識-防空識別圏の悪用

防空識別圏の設定自体は珍しいことではありませんが、中国の動きは異常としか言いようがありません。

周辺国との事前調整もなく、唐突に日本と重複する空域を設定したばかりか、日本固有の領土である尖閣諸島をも含めたことに加えたことです。

そして、同空域に入る航空機への中国政府への通告義務を課し、さもなくば「防御的緊急措置を取る」と脅しています。

最大の問題は、中国が防空識別圏を「管轄権が及ぶ空域」つまり「縄張り」と考えていることで、これは中国軍機が「巡視飛行」と表現したことからも明らかです。

さらには、中国の空軍報道官の談話として伝えたことには、「防空識別圏内での巡視飛行を常態化させていく」とも強調しているようです。これは、中国の非常識とアジア侵略の野望を、世界に示す証拠と言えます。

そもそも中国には、防空識別圏を「縄張り」と考えることへの確信犯的な間違いがあります。我が国も防空識別圏を設定していますが、あくまでも我が国の領空を護るために、その前方で警戒ラインを想定しているに過ぎません。

また自衛隊機によるパトロール飛行も行っていますが、その目的は空域のパトロールではなく、海上の不審船などへの警戒監視が目的です。しかし中国の航空機は、空域を支配するかの振る舞いであり、国際的非常識かつ、力ずくで支配圏拡大をねらった、前近代的な思考であると感じるわけです。

◆なぜ、中国は防空識別圏の設定に動いたのか?

《制空権の獲得》

【1】戦闘では、制空権が勝敗を決します。従って、第1列島線の完全内海化ためには、上空の制空権が必要であり、その布石が防空識別圏の設定です。

【2】従って、今後、台湾や南シナ海方面にも制空権確保を狙った、防空識別圏の設定は充分あり得るシナリオです。

【3】制空権の確保は、空および海上からの占領を容易にするねらいがあります。特に尖閣上空の制空権が中国に落ちれば、自動的に尖閣占領が完了したのも同然となります。

【4】次に太平洋へのルートづくり。沖縄本島~宮古島間を通って太平洋に出る中国海軍のエアカバー(航空支援)として空軍の航空機が必要であり、防空識別圏の設定によって、中国の通り道として世界的に認めさせる意図があります。

《日米の情報監視を阻む目的》

日米は東シナ海においても中国軍への監視を続けています。例えば、海上自衛隊は高性能の対潜哨戒機P3Cを東シナ海でパトロールさせ、中国潜水艦の動向を日夜追っています。

また、尖閣上空のレーダー監視の穴が指摘されてからは、米軍と共同して、E2Cなどの空中警戒(管制)機を飛行させ、米軍はさらに中国の沿岸近くまで入り込み、電子偵察機や無人偵察機を使って、情報収集にあたっています。

特に高高度を飛行できる無人偵察機(グローバルホーク)を使うことで、中国内陸部の軍事施設などを探れると言われています。

防空識別圏の設定は、こうした日米の監視活動を阻止するねらいがあります。中国軍が日頃の行動を情報収集され、部隊能力や軍事作戦が筒抜けになる危機感を持ったとしても不思議ではありません。

特に、沖縄本島~宮古島間を通って、太平洋に進出する中国軍艦船や潜水艦のルートの解明などは、有事の中国艦隊の行動を推測できる重要な手がかりを日米に与えてしまうことになるからです。

《対アメリカ戦略-足元を見られたアメリカ》

経済的没落の危機にあるアメリカは、中国との全面対決を望んでいません。さらにオバマ政権の外交姿勢は「世界の警察であることを止める」方向へ進んでおり、シリアへの軍事介入中止は世界の失望を招いてしまいました。

またイラン核開発阻止においても、北朝鮮の二の舞となるであろう不毛の多国間協議へと逃げ込む姿勢を見せています。そんなオバマ大統領にとって、中国の防空識別圏問題は頭の痛い問題であろうことは間違いありません。

中東での問題が未解決のまま、中国とも事を起こすのは避けたいはずであるし、かといって、日本がアメリカ離れを起こすような事態だけは避けなければいけないからです。

しかし、米国が「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用対象」だと明言して、中国に対抗する意思を示してはいますが、中国の強気の出方を見る限り、尖閣問題においては、アメリカの抑止が機能しているとは言いがたいところもあります。

要するにアメリカの外交自体が、中国に対して協調主義的な政策を取っており、ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、最近のワシントンでの講演で「中国とは大国関係の新たなモデルを模索している」と、批判を避けているように、アメリカは完全に足元を見られています。

《明日につづく》(文責・岐阜県本部副代表 河田成治)

河田 成治

執筆者:河田 成治

岐阜県本部副代表

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