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軽減​税率という甘い罠

◆政局と税制

公明党の強いプッシュに押される形で、安倍首相が消費税の軽減税率の検討を命じました。

目下、軽減税率の導入に積極的な公明党と、消極的な自民党・財務省の綱引きの様相を呈しています。(12/1産経「『師走闘争』に走る公明党 軽減税率論争の行方は」

また公明党は、消費税の10%への増税も推していました。この背景については、青山繁晴氏が興味深い報告をされておられます。

公明党と財務省の密約が存在するというのです。公明党は、軽減税率を公約に掲げており、何としても実現したいところでしょう。

財務省は、軽減税率は税収が減るので、導入はしたくないのですが、税率が上がれば話は別で、軽減税率を導入する旨味が十分にあります。

どの分野に軽減税率を適用させるか、という巨大な裁量権を手にするからです。この裁量権をテコに、天下り先には困らないことでしょう。

安倍首相はと言うと、アベノミクスの成功が最優先で、10%増税には消極的だそうです。

そこで財務省が、軽減税率を認める代わりに、消費税増税10%を実現させるということで、公明党と密約を交わしたというのです。

以上が、青山氏の発言の概要です。(11/16「アンカー青山繁晴のニュースDEズバリ」)

ことの真相は分かりませんが、ともあれ国益とは関係ないところで税制論議が進んでいるとすれば、不届き千万です。

◆そもそも軽減税率は善か悪か

ところで、軽減税率という制度自体を、どのように考えるべきでしょうか。

軽減税率とは、低所得者への消費税の負担を軽減する目的で、食料品などの生活必需品に限定して、低く抑えられた税率のことです。一見、低所得者に優しい税制のように見えます。

しかしここで問題になるのが、「生活必需品」を決めることが出来るのか、ということです。例えば、一体どんな服だったら生活必需品で、どんな服が贅沢品だと言うのでしょうか。

100グラム何円のお肉だったら、生活必需品のお肉だと言うのでしょうか。そのルールを決めるのに、適切な基準はありません。

探しても見つかりませんし、そもそも誰かを説得できるような、そんな明確な基準は存在しないのです。だったら、どうやって決まるのでしょうか。

正しさの基準が無い中で決めなければなりません。ですから、幾つかの業界や政治家の強い意向を材料にして、官僚の裁量で決めるしかなくなる訳です。

◆複雑なルールは、静かに自由を奪う

国民の自由を保証するのは、私有財産の権利です。お金が自由に持てて、自由に使えるから、国民は自由に経済活動をすることができます。

そして、国民の自由を奪ってきたのは、権力者の裁量による課税です。そういった権力者の裁量を抑制するために、議会や憲法が発明されたのです。

だからこそ、現代においても、官僚に裁量を与えるような政策を選択してはなりません。
裁量の余地が無いように、ルールにはシンプルさが必要です。シンプルな制度は、官僚の裁量を拡大させないためにどうしても必要な条件なのです。

軽減税率も累進課税も、一見、低所得者に優しく見えます。

しかし、軽減税率や累進課税に、寄って立つべき正しさが見出されない以上、この制度の中で自由を守ることはできないでしょう。

◆複雑さの中に、自由を奪う罠がある

様々な状況がある中で、「結果の平等」を実現しようとすると、多くの規制や累進課税によって、制度は複雑になるばかりです。

複雑ゆえに、官僚は裁量を働かせやすく、また官僚の人数も増えて、大きな政府が出来上がってしまいます。複雑な議論の中で、国民の自由は危機にさらされることになるでしょう。

私たち国民は、機会の平等に向かう政策か、結果の平等に向かう政策か、見極めなければなりません。

複雑な議論には、その背景にあるやましさを疑いましょう。その複雑さの中に、自由を奪う罠が潜んでいます。

「機会の平等」に複雑さは不要です。税制論議は自由を守るための戦いです。幸福実現党は自由を守るために戦い続けます。(文責・HS政経塾 三期生 田部雄治)

たなべ 雄治

執筆者:たなべ 雄治

HS政経塾 三期生

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