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腰砕けになった『デフレ退治』への決意~未来ビジョンこそ未来を拓く鍵~

自民党の安倍総裁は今月7日、都内で講演し、同党が政権を獲得した場合の金融政策について「日銀と政策協定(アコード)を結んでインフレ・ターゲットを設けたい」と述べました。

日銀の金融緩和をめぐっては「金額で制限を置くのではなく、目標を達成するまでは基本的に無制限に緩和する必要がある」と指摘しました。(11/7日経)

安倍氏は日銀の国債引受けにも言及。安倍発言後、一気に相場は円安、株高に動きました。

これに対し、日銀白川総裁は、安倍総裁の発言は現実的ではないと一蹴。「積極的な緩和は既にやっている。日銀の強力な金融緩和策を反映して金融環境は緩和した状態にある」と述べ、自民党の安倍総裁ら積極緩和を求める動きに真っ向から反論しました。(11/20毎日)

米倉経団連会長も安倍発言を「大胆な金融緩和というより無鉄砲」と批判し、相場が円安、株高に動いたのは、日銀の緩和策の成果だとコメントしました。(11/27朝日)

これらの批判を受けて安倍氏は一気にトーンダウン、自らの発言を修正し始めました。日銀に対する建設国債の引き受け要求を事実上撤回し、前年比2~3%としていたインフレ目標を自民党の政権公約では2%に見直しました。(11/27岐阜)

しかし、安倍発言の後、相場が円安、株高に動いた事実を素直に見るとき、少なくとも市場は、安倍発言に期待感を持ったことは事実でしょう。

金融緩和で積極的にデフレを退治しようとする安倍氏への期待感、これが相場を動かしました。日銀の緩和策の成果とは考えにくいと思います。

デフレ退治への決意、しかしここにもう一つ足らないものがあったとすれば、それは日本と世界についての未来ビジョンです。安倍氏に確固たる未来ビジョンがあれば、少々の批判でトーンダウンすることはなかったと思います。

確固たる未来ビジョンの無さが、信念を貫けない、政策を断行できない弱さになっています。

今、日本という国家そのものに未来ビジョンがありません。ゆえに、「現状維持」が唯一の動機となり、デフレ経済、低迷する日本という現状そのものを維持しようと、変化を嫌う風潮が蔓延しています。

変化を嫌うということは、チャレンジ精神をも喪失してしまいます。

ケインズの有名な言葉「嵐の最中に経済学者が言えることが、嵐が過ぎ去れば波は静まる、ということだけなら、経済学者の仕事は他愛もなく無用だ」から敷衍すれば、デフレ不況という最中に、デフレ退治さえしようとしない、それが政府、日銀の姿かもしれません。

日本のデフレ脱却のためにインフレ・ターゲットを導入すべきと主張してきたノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、与謝野馨財務大臣兼経済財政担当大臣(当時)とのTV対談(2009)において、「日本の政治家、官僚等がインフレに対する恐怖を誇張しすぎている、それは水害の最中に火事の危険を叫ぶようなものだ」と痛烈に批判しています。

また同氏は「何が有効かなんて誰にもわからない。とにかくボタンを押してみることが大切なんだ」とデフレ退治のために何もしようとしない日本の政府、日銀を批判しています。

今、総選挙を目前に控え、昨日新党が結党されたかと思えば、今日には解党、そのような政治家の離合集散の姿が報道されています。

安倍氏の金融緩和に対する発言も、月初、「日銀国債引受け」を言ったかと思えば、月末にはその発言を撤回するという体たらく。

幸福実現党が2009年立党当初より訴え続けてきた政策(インフレ・ターゲット等)をほとんどそのままお使いになったところまではよかったのですが、結局、未来ビジョンの欠如により腰砕けになってしまいました。

安倍氏はかつて首相時代に、持論の靖国神社参拝、河野談話見直し、従軍慰安婦の否定等について、近隣諸国等から強い反発を受けて、棚上げしてしまいました。

どうか、国防政策等についても同じ轍をお踏みになられないよう切に願う次第です。
(文責・加納有輝彦)

加納 有輝彦

執筆者:加納 有輝彦

岐阜県本部政調会長

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