このエントリーをはてなブックマークに追加

少子高齢化社会の問題と日本が目指すべき方向

現在の日本は、世界のどの国も経験したことがないスピードで少子高齢化を迎えています。

なぜ、この少子高齢化が問題なのかというと、国の経済を支える働き手(「生産年齢人口」)がいなくなるからです。

15~64歳の生産年齢人口は、1995年に約8700万人というピークを迎えて以降、減少を続けており、2010年には約600万人減の約8100万人になりました。

そして、このまま減少を続ければ、20年後の2030年には約6700万人になり、ピーク時より約2700万人も減少することになります。

東京の人口が約1300万人ですから、20年後には、まさに東京2つ分の人口と同じだけの働き手がいなくなってしまうことになります。

さらに、2050年には生産年齢人口は約4900万人になり、ピーク時の約半分にまで減ってしまいます。

日本経済を支える働き手が減少することで、社会保障と産業の衰退という二つの大きな問題がさらに深刻化することになります。

先月、民主党政権下で「社会保障と税の一体化」というスローガンの下、増税が決まりました。

しかし、このまま少子高齢化が加速し、国の働き手が減少すれば、真っ先に破綻するのが年金制度です。

人口の半分が65歳以上になるという状況で、このまま、現行の年金制度を維持しようとするならば、若い世代に平均税率50%以上の重税を課す以外に方法はありません。

働き手が減る分、その負担は倍増するのです。若者は重税を余儀なくされる上に、育児、出産、高齢者の社会保障負担と計り知れません。

果たして、このような重い負担を背負う若者は幸福だといえるのでしょうか?

まさに、このままであれば、「制度によって生かされるのではなく、制度のために生きる」状態が待っているのです。

もう一つ、生産年齢人口が減少することで引き起こされる問題として、産業の衰退がありますが、特に衰退が著しい産業として、農業、漁業、中小企業があります。

現在の農業就労者の平均年齢は約66歳であり、そのうち65歳以上の高齢人口が全体の61%を占めます。

このままの状態が続けば、10年後には半分以上が75歳以上という状況になり、日本の農業の存続が危ぶまれています。

また、漁業においても同じような苦境に立たされ、2003年から2008年のたった5年間で、漁業就労者数が20%も減少しています。

また、世界に誇れる日本の「ものづくり」の技術を支えている大半が中小企業ですが、近年の大企業志向、安定志向等により、若者の就職希望がないことから、「継承者がいない」「人手不足」といった理由で廃業に追い込まれている企業が多いのです。

この大きな問題の解決策として、幸福実現党は移民の受け入れを提言しています。

同じく、このような危機にいち早く気づいていたのが、社会学者であり、「マネジメントの父」と呼ばれたP.F.ドラッカーです。

ドラッカーは生前、90年代初期から「日本は年間50万人の移民を受け入れなければならなくなる」と提言しています。(『ドラッカーの遺言』p.91)

日本の少子高齢化の問題というのは、今に始まったことではありません。以前から、国の未来を左右する重要な課題だとされてきました。

ところが、政治家達は、自分達が政界からいなくなる20年後、30年後の責任は感じることがないのか、目先の政権運営、選挙で多数を取るための政策ばかり打ち出しています。

今後、グローバル化が一層進む中で、日本は以前にも増して厳しいグローバル競争の中に身を置かれます。

その中で日本は、世界のどの国も経験したことがないスピードで進む少子高齢化というハンディを背負いながら戦うことになります。

「自分達には関係がない」「まだ先のことだ」とのんびりしていては手に負えない事態に至ります。

私達はこの先、「高齢者人口が全体の4分の1になり、やがて3分の1、半分になったときに、どういう世の中になるか」ということを真剣に考え、対応していかなければなりません。

もし、少子化対策が成功し、子供が増えたとしても、その子供が就労できるまでに約20年の時間が必要です。

生まれた子供の人口がすぐに労働人口となるわけではないので、一人の女性が産む子どもの数を増やせば解決するという問題ではありません。

また、失業対策や雇用対策を行っても、基本的に日本人は労働が不足している農業や漁業などの「3K」といわれる仕事には就きたがらず、雇用の空洞化が起こっているのが現状です。

もちろん、少子化対策、失業対策などは重要ですが、それだけでは、世界のどの国も経験したことがないスピードで進む人口減少に追いつきません。

そのような政策を実行すると同時に行っていかなければならないのが、人口減少の解決策として即効性があり、長期的な人口増につながる「移民受け入れ」なのです。

日本は、単一民族であり、移民を受け入れてきたという歴史が遣隋使や遣唐使といった古来まで遡らなければなりません。

また、大きな抵抗感が国民全体にあるために移民受け入れという政策や考え方に対しては、多くの反対意見が根強くあります。

しかし、このまま人口が減り続け、この国が小さく、小さくなっていく未来を選ぶのか、移民を受け入れ、さらなる発展・繁栄の未来を選ぶのか。今、どちらを選択するのかを私たちは問われているのです。

具体的にどのように移民受け入れを行っていくのかなど、引き続き、今後のHRPニュースで提言して参ります。皆様と共に日本の未来を考えて参りたいと思います。
(文責・HS政経塾2期生 服部聖巳(はっとり・まさみ))

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

page top