《リアル・ファイナル・ジャッジメント2》中国ウイグル自治区で起きている「宗教弾圧」
現在、大ヒット上映中の映画『ファイナル・ジャッジメント』(http://www.fj2012.com/)のワンシーンにおいて、「オウラン人民共和国」の総督が演説する姿が、渋谷の街頭ビジョンに大きく映し出され、若者達が唖然として見上げます。
「宗教は国家と自由を蝕むアヘンであります。オウラン国では宗教活動はすべて非合法であります。オウラン国民となった皆さんはあらゆる宗教を捨て、唯一の思想体系である、オウラン人民党綱領の理念を信じ、行動しなくてはなりません。」
まさしく、この映画のワンシーンのような事態が中国のウイグル自治区で発生しました。
今月6日、新華社電は、中国新疆ウイグル自治区のホータン地区で「警察が『違法な宗教団体』の拠点を摘発し、中にいた児童54人を救出した。団体側が抵抗したため、児童12人がやけどを負い、病院で手当てを受けた。警察官3人も負傷し、団体側の3人が容疑者として拘束された」と報じました。(6/7 時事⇒http://goo.gl/ho8oR)
報道では、オウムのような「違法な宗教団体」によって監禁されている子供たちを救出するために、警察隊が押し入って救出したという美談になっています。
しかし、その実態について、世界ウイグル会議のスポークスマン、ディルシャット氏は、警察は子供達のいる教室に催涙ガスを撒き侵入し、さらに火災はその催涙ガスによるものだろうという見解を示しています。
日本ウイグル協会は、この事件について、下記のような見解を述べています。(出典:日本ウイグル協会「ウイグルの子供たちを助けてください!――東トルキスタンで起きている宗教弾圧について」⇒http://goo.gl/prKQD)
・子供たちは通常の学校が始まる前の早朝に「宗教学校(私塾)」に通い、イスラム教を学んでいた。そこへ警察が押し入って催涙ガスを撒き、銃撃された。
・中国では18歳未満はモスクなどでの礼拝に参加できず、イスラム教の教義を学ぶための手段を奪われている。したがって、こうした私塾に通うしかないのだが、これを中国政府は「違法学校」だとして、近年とくに取り締まりを強化している。
・現在、ウイグル人は、このような宗教学校(私塾)や自宅でイスラム教の教義を学ぶことにおいてさえ、警察による拘留と暴力的迫害の危険にさらされてれている。
・中国政府は、自らが認可を与えた団体の存在・活動のみを「合法」とし、それ以外のあらゆる宗教活動(個人のお祈り等を含む)、団体を厳しく弾圧している。
これまでウイグルで黙認、見過ごされてきたレベルの宗教活動に対しても、武装警察を使った徹底的な弾圧を中国当局が開始したということです。
また、チベットでも新たな弾圧が始まっています。中国当局がチベット自治区への外国人観光客の受け入れを中止したとの情報も出ています。(6/7 産経「中国、外国人観光客の受け入れ中止か チベット自治区」⇒http://goo.gl/tNEdC)
昨年末から相次ぐ宗教政策に抗議する僧侶らの焼身自殺(確認されているだけでも既に約40人)や、デモ等の情報封鎖と、そうした抵抗運動ををさらに厳しく取り締まるための措置と見られています。
この六十数年の間の中国によるチベット人に対する虐殺、拷問の歴史を振り返る時、想像するだけでも、言葉を失い、心が痛みます。
そうした国内での弾圧強化の背景にあるのが、中国共産党支配のほころびと矛盾の拡大です。
薄熙来(はく・きらい)失脚に象徴されるような凄まじい権力闘争とともに、共産党幹部と役人の汚職やバブルの崩壊、拡大する一方の貧富の格差など、共産党一党独裁への国民の鬱憤や批判が高まっています。
また、中国の情報機関である国家安全部(省)次官の男性秘書が、国家機密を米国に漏洩していたとして今年初めに拘束されました。(5/28 Record China「中国情報機関の男性秘書がハニートラップにかかり、米国のスパイに」⇒http://goo.gl/QQWtZ)
事件を知った中国の最高指導部は激怒し、次官の停職と関係者約350人を対象とした徹底調査を命じたといいます。国家安全部は、まさに国家の権力基盤の根幹となる諜報活動の心臓部であり、その影響は甚大です。
そうした緩んだ権力基盤のたがを締め、国民の中国共産党への批判を逸らすために、ウイグルやチベット等を「敵」に仕立て上げ、同時に対外的な領土問題にも強硬策に打って出る――これが今、中国共産党が取り始めた「国家存亡を掛けた」戦略です。
そして、中国の最大の「外敵」となるべき「敵対国」のターゲットの一つは、まぎれもなく日本です。
中国は今後、尖閣諸島占領とその延長にある沖縄支配、そして西太平洋支配に向け、ますます積極的かつ強圧的な行動に出てくるはずです。
いつ何時、「度肝を抜かれるような」出来事が起きてもおかしくない――それが今の沖縄が置かれている情勢です。
日本は今、「国家の存続」を賭け、「毅然たる決断」をなすべき時を迎えているのです。
(文責・矢内筆勝)