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日本は「世界のリーダー国家」として、エネルギー・情報「インフラ」を整備・輸出せよ!

電力は日本の「ものづくり」やビジネス活動の根幹です。しかし、現在、国内54基の全原発の停止による電力不足の懸念や、東京電力による電気料金の値上げの問題が、世間を賑わせています。

日本は3.11以前においては想像もしていなかった電力危機に陥っており、政府は「発送電分離」「電力業界のルールの見直し」「風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの拡大」「省エネの促進」等を検討しています。

今後の日本の電力事情の大きなトレンドとして、「賢い送電網」という意味の「スマートグリッド(次世代送電網)」が挙げられます。

ただ、間違えてはならないのが、「脱原発」をお題目のように唱える、「環境左翼」思想(「原発不要論」)のためにスマートグリッドを導入すべきではありません。

電力の安定供給のためには、まだまだ原子力発電は必要です。大切なことは「より便利で効率的な新しい街づくり」のインフラとして導入するべきです。

この「スマートグリッド」は「供給・需要側の双方向性を持つ、電力と情報の新しいインフラ」と定義されています。

すなわち、大規模発電(火力、原子力等)や分散型発電(風力、太陽光等)の電力供給側の情報を統合すると共に、「スマートメーター」によって家庭やオフィス等の電力需要側の情報をリアルタイムに掌握することで、きめ細かな発電が可能になります。

その結果、従来のような無駄な発電は不要になり、エネルギーの効率的利用が可能になります。また、スマートメーターを活用して、時間帯に応じた柔軟な料金メニューを設定する事で、料金インセンティブによる需要抑止(ピークカット)やピークシフト効果も期待されています。

この「スマートグリッド」を導入するポイントとしては、下記3点が挙げられます。

第一に「IT技術を利用した電力系統の管理・制御」です。

家やビル全体のエネルギー供給、需要の状況を総合的に把握し、電気機器や設備を集中的に管理することによって、電力の安定性、効率性を高めることにあります。

第二に「再生可能エネルギーの利用の拡大」です。

既存の技術である火力や原子力と、新たな技術である再生可能エネルギーを融合することにあります。

再生可能エネルギーの多くは天候任せのものが多く発電量の予測がしにくいため、既存の集中型電源と同時に利用するには、双方の発電量を正確につかんで、需給バランスを一致させる必要があります。

予測が難しい自然エネルギーの割合が増えると、電気機器の故障や停電恐れが生じ、一定の「電力品質」を保つことが出来なくなります。現在の電力網のままでは、導入限界は全体の10~20%と言われています。

第三に「エネルギー安全保障レベルの向上」です。

国全体のエネルギー効率を上げ、再生可能エネルギーを導入することにより、石油輸入を減らすことにあります。米国や韓国、シンガポール等では、スマートグリッドを導入するプロジェクトは「エネルギー安全保障」の一環として、はっきり位置づけられています。

スマートグリッドは「次世代送電網」とあるので全てが「新しい技術」なのかというとそうではなく、既にこの言葉が登場する以前から研究開発、導入されているものが多くあります。

「新しい」のは、これらを統合し、イノベーションさせた点にあります。既存の技術と新たな技術を最大限に有効活用するための、エネルギー、情報の「インフラ」なのです。

このようなスマートグリッドを地域に導入し、「スマートシティ(環境配慮型都市)」をつくり出そうという動きは既に始まっています。

2010年に経済産業省が、「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、横浜市、愛知県豊田市、京都府けいはんな学研都市、北九州市の4地域を指定し、実証実験がなされています。

他にも、「スマートシティ」を日本再興の原動力にしようと、被災地の6地域を含む全国11か所の環境未来都市でも取り組みがなされています。

また、世界に目を移してみると、中国を中心にしたアジア諸国、中南米や中東・アフリカ諸国等でも、安定した効率の高い系統の構築に向けて、急速にスマートグリッド導入の気運が高まっています。

世界のエネルギー関連企業やシンクタンク等の調査では、年間約100兆円以上の市場規模に成長すると予測されており、中には、500兆円規模まで成長するという意見もあります。今後、スマートグリッドに端を発するトレンドはますます加速していくでしょう。

日本の取るべき道としては、日本発の「スマートシティ」の国際標準をつくり、それを輸出していくべきです。

新興国が「スマートグリッド」を自ら構築することは非常に困難です。日本は、世界の「リーダー国家」として、エネルギー・情報「インフラ」を輸出していく気概を持つ必要があります。

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執筆者:webstaff

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