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いま必要なことは、フロンティアを開く志だ

文/HS政経塾 スタッフ 赤塚一範

◆景気悪化

1月29日に日銀はマイナス金利の導入を発表し、デフレ脱却に向けて決意を新たにしたにも拘らず、3月23日に発表された政府の月例経済報告では「このところ弱さもみられる」と景気が悪化していることが明らかになりました。

マイナス金利の効果がすぐに出るわけではないでしょうが、これで本当に経済はよくなるのでしょうか。

◆金融システムは資本主義経済の心臓

金融システムは、資本主義経済の根幹であり心臓です。

幅広い人から資金を集めリスクを分散することで、より大きな事業を可能とする金融システムが資本主義社会をダイナミックに発展させてきました。

例えば世界で最初の株式会社と言われる東インド会社は、金融システムを活用することによって、リスクの高い貿易事業を容易にし、莫大な利益をもたらしました。

◆限界が来た金融政策

マイナス金利は、長い目で見て資本主義の根幹である金融システムを機能不全にします。

お金の貸手である預金者にとってマイナス金利は、預金に対する手数料であり貯蓄する意欲を減退させ資本供給を減少させます。

日銀の黒田総裁は個人の預金はマイナス金利にならないと言いますが、欧州では、一部の企業や富裕層の預金で口座維持手数料をかけることによって実質的にマイナス金利になっているようです。

日本でも、先月、三菱東京UFJ銀行が大企業の口座に手数料の導入を検討するとニュースが流れました。

マイナス金利は銀行の収益を悪化させるため、今後、口座維持手数料が個人口座にまで広がる可能性はゼロではないでしょう。そうなれば、銀行に預けないタンス預金が多くなるかもしれません。

一方、お金の借手である企業にとって、マイナス金利は、通常では淘汰されるべき事業でも実行可能となることを意味します。

仮に利子率がマイナス10%であったとすると、企業は100万円借りて90万円しか返済できないような事業でも成立することになります。これは極端な例ですが、実際の問題として政府にとって、事業の中身よりもお金が回る方が大切であると考えているのでしょう。

しかし、現実には、それでも企業の投資は動いていなようです。これはよほど将来を悲観的に考えていると言えます。

◆スティグリッツ教授の意見

このように、異常な状態であるマイナス金利ですが、それでもお金が動く気配がないのはさらに異常です。

今月来日したスティグリッツ教授は安倍首相に、問題は総需要が足りないことであり、金融政策だけでは限界で、政府が積極的に財政政策としてインフラやテクノロジーへの投資を行うべきとしました。

個人的には概ね教授の意見には賛成ではあるのですが、本当に財政政策で需要を増やせばそれで良いのでしょうか。

また、スティグリッツ教授が、新自由主義は間違いであり、不況期での生産性の向上、供給の強化は失業を招くとするのも問題を単純化しすぎているように感じます。

◆国家ビジョンの重要性

なぜ、かつての日本は高度経済成長し、近年の中国は成長できたのでしょうか。それは明確な将来ビジョンが政治家にあり、またそれを国全体で共有できていたからです。

アメリカという案内人がいれば、ビジョンを持つことは比較的容易であり、そのビジョンに向かって、政府は公共事業を行い、銀行は貸出をし、企業は投資を行ったのです。

今、問題なのは、需要が無いことではなく安倍首相や閣僚の方々に明確な未来ビジョンが無く、そのことが国民を不安にし、悲観的にさせているのではないでしょうか。

◆世界のリーダーとしての志が経済を成長させる

もはや日本はアメリカのフォロワーではありません。

日本がさらに成長するためには、日本が将来どのような国になっていくべきか自ら明確な理想を描かなくてはなりません。ビジョンがなければ財政政策は単なるバラマキです。

スティグリッツ教授は、生産性の向上は失業を招く、供給は需要を生まない、としていますが必ずしもそうとは言い切れません。確かに同じ商品だけを生産する場合、生産性の向上は失業を引き起こすこともあります。

これまで機械の導入による生産性の向上によって職を追われた労働者は数多くいます。

しかし、まったく未知の商品やサービスをつくる場合、フロンティアを切り拓く場合、供給は新たな需要を生むのです。この意味での生産性の向上は、失業を生みません。逆に、ビジョンなき財政政策こそ一時的な失業対策にしかならないのです。

マイナス金利の今だからこそ大きな投資が可能です。まだ、宇宙には広大な空間が広がっています。また、人間に与えられた24時間しかなく有限です。

時間を縮め人生の密度を高めるためにリニア新幹線や超高速旅客機、その他交通網への再投資などすべきことは数多く残されているはずです。さらに貧しい国は数多くあり、抑圧的な国家である中国は世界の覇権を狙っています。

今こそ日本は世界のリーダーとしてのビジョンを持つべきであり、その志に向かって、政府、企業、銀行など金融機関、大学など研究機関が各々の場所で努力、協力していくことが必要です。

赤塚一範

執筆者:赤塚一範

HS政経塾スタッフ

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