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マイナンバー、統制社会に気をつけよ!――スウェーデンを参考として

文/HS政経塾スタッフ 赤塚一範

◆マイナンバー制の目的

日本年金機構は、サイバー攻撃により125万件にものぼる年金情報が流出したことを発表しました。

現在、導入に向けて準備が進められているマイナンバー制で、今回のようなことが起らないよう、政府は対策強化を求められそうです。

以前にも、「マイナンバー自体は、『行政の効率化』『公平・公正な社会の実現』『国民の利便性の向上』の達成を目的とした制度であるが、政府の真の目的は、国民の所得や資産の正確な捕捉であり、この制度の導入は非常に窮屈で抑圧的な社会への前進となる可能性がある」と指摘させていただきました。

今回は、マイナンバー制度の先進国であるスウェーデンから、マイナンバーに潜む危険性を考えてみたいと思います。

◆スウェーデンは極めて能率的な管理社会?

スウェーデンのマイナンバー制は、1947年に住民登録番号として始まり、コンピューターの導入を経て、1967年に納税者番号として使用されました。

古い歴史をもつスウェーデンのマイナンバー制ですが、現在では、銀行口座の開設、クレジットカードの取得、運転免許の取得、車の購入、病院での受診など、あらゆるところでマイナンバーが活用されています。そして、それらの情報の多くは政府にも共有されています。

例えば、ある人が車の駐車違反に我慢できず、警察に電話すると警察官はすぐに「その車の持ち主が若い夫婦であり、自分が電話すれば10分後には車をどかすだろう」「違反したことは記録に残るから二度とその夫婦はそういったことを行わないだろう」と言ったそうです。

そして実際にはそれよりも短い5分ほどで女性が出て来て車をどかしたのです。『日本はスウェーデンになるべきか』(高岡望著)これに関して本の著者は「極めて能率的な管理社会」であると感じたそうです。

◆行き過ぎた透明性

また、スウェーデンではこれらの情報を簡単に取得できます。多くの国で、政府は透明であることが求められますが、スウェーデンでは国民にも透明性が求められます。

例えば、スウェーデンでは、すべての国民の個人番号と住所、課税所得は公開情報であり、国税庁に電話すれば知ることができ、もし所得に見合わない派手な生活をしていたら国税庁に通報することができます。(2010年6月28日 朝日新聞朝刊)

また、運輸庁のホームページで車のナンバープレートを入力すれば持ち主を特定することもできます。『日本はスウェーデンになるべきか』(高岡望著)

これは、「お互いの個人情報を透明化し、お互いにやましいことが無いようにしよう」という思想に基づいた結果、現れた制度です。

しかし、これでは、互いを監視し合うために作られた江戸時代の五人組のような前時代的な制度の拡大に見えなくもありません。

日本がマイナンバーを採用したからと言って、すぐにスウェーデンと同じになるわけではありませんが、このような制度を技術的に作りやすくしてしまうのは事実でしょう。

◆強制徴収庁の存在

また、スウェーデンには、税金や社会保険料などを滞納した場合、政府が強制的にお金を徴収する「強制徴収庁」なるものが存在します。

強制徴収庁は、債権の取り立て、財産や給与の差し押さえなどをすることができ、マイナンバー制による情報管理と相まって、一定の成果をあげているようです。

◆スウェーデンモデルの危険性

確かにスウェーデンは、生産面において日本よりも上手く市場の力を活用し(市場原理主義に近いとも言える)、順調に経済を成長させています。

また、日本では特別会計の不透明性が問題となっておりますが、スウェーデンでは政府の透明性に関しては群を抜いており、そのおかげか国民の政府に対する信頼は厚いものがあります。これらの点に関して日本も学ぶべきところが幾つかあるのは確かでしょう。

しかし、多くの点で、スウェーデンモデルは問題を抱えています。スウェーデンのマイナンバー制は、業務の効率化という点では役に立つかもしれませんが、極めて専制的な政府が現れた場合、政府は容易に国民を弾圧しうることをも意味します。

スウェーデン政府は、現時点でもやろうと思えば自身に反対するものの所得や資産を瞬時に把握し差し押さえることができるのです。

スウェーデンのマイナンバー制や福祉制度は、「国家は国民の家」という思想に基づいてつくられています。

ここから「家族を解体し、政府が子供や高齢者の面倒を見るべきだ」「国家が国民を面倒みるべきだ」という発想につながり、スウェーデンの家族の崩壊が起りました。

「政府が国民を面倒見る社会」は、いつ「政府は国民に自由に命令できる社会」へと転落するか分かりません。

日本ではマイナンバー制の実施を控えていますが、マイナンバー制やそれを活用したスウェーデンモデルには、このような危険が潜んでいることを忘れてはなりません。

赤塚一範

執筆者:赤塚一範

HS政経塾スタッフ

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