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軽減税率のワナ、軽減税率は日本の社会主義化を進める

文/HS政経塾スタッフ 赤塚一範

消費税は逆進性を持つと言われています。

逆進性とは、「消費税はすべての商品にかかるため、高所得者は消費を控えれば消費税を払わなくてすむ一方で、低所得者は必需品を切り詰めるわけにはいかず税負担が増してしまいます。

つまり低所得者ほど負担が大きいこと」です。

自民・公明党は、逆進性の緩和のため、2017年4月の消費税10%への引き上げの際、必需品にかかる税を軽くする軽減税率の導入を進めています。

日本は、消費税の引き上げと一見低所得者に優しく見える軽減税率の導入によって、滅びの道に至ることでしょう。

◆軽減税率は政府に大きな権限を与える

軽減税率は、商品ごとに税率を決める権限を政府に与えます。これは、政府の許認可・裁量で商品ごとの税率が決められ、経済がコントロールされることを意味します。

今年の6月に自民・公明両党が公表した税制調査会資料では、あらゆる商品について検討されています。これを見て、社会主義国家、配給社会の復活を危惧される方もおられるのではないでしょうか。

幸福実現党は「大きな政府」を批判しておりますが、それは「予算規模」だけでなく「政府の権限・許認可の範囲」の大きいことも含まれます。

多様な生活スタイルが存在する現代において、すべての商品を政府が管理する政策はかつてのソビエトや中国、今の北朝鮮へと日本を導いていくことに他なりません。

【内閣府】 第9回 税制調査会(2014年6月11日)『消費税の軽減税率に関する検討について』
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2014/26zen9kai.html

◆贅沢品は悪だと言う強いメッセージを発し、発展を阻害する

また、軽減税率は「贅沢品は悪である」と強いメッセージを市場に発します。それは、低所得者対策という当初の目的から大きく逸脱し、国の発展を止めることを意味します。

イギリスでは、外食には20%課税されますが、スーパーでのお惣菜の持ち帰りは0%です。ただ、お惣菜でも気温より暖められた場合には20%課税されます。

それは、温かい食べ物や外食は、必需品でない=贅沢品であるからです。カナダでは、ドーナツ5個以下は5%課税で、6個からは0%です。

これは「個数が少ないとその場で食べられるため、外食、贅沢品と判断できる」からです。このように必需品でないから多く税金がかかるというのは、「贅沢はダメで必需品しか買えない生活は良い」というメッセージになります。

しかし、そもそも発展の歴史は、「贅沢品が必需品となっていく過程」そのものです。

今日の必需品である車、テレビ、クーラーなどかつては贅沢品でした。人間は将来どのような商品が流行るか知ることはできません。軽減税率では新しい商品は全て贅沢品となります。

このように軽減税率は、贅沢品や新しい商品を否定することで経済発展を否定します。新製品を作るたびに、これは必需品にしてくださいと政府にお伺いを立てなくてはなりません。

これで新製品が作りにくくなり、イノベーションが起きにくくなってしまいます。

◆軽減税率は民主主義を堕落させ紛争の種を蒔く

また、軽減税率は人々のタカリの精神を増長させます。広く万民が議論するという民主主義は、自分の産業だけ優遇してもらいたいとい欲望をもつ有権者と職を安定させたい議員の単なる取引の場となるでしょう。

実際、フランスでは、キャビア(19.6%標準税率)に対してフォアグラやトリュフ(5.5%軽減税率)、マーガリン(19.6%標準税率)に対してバター(5.5%軽減税率)のように明確に産業保護を目的として軽減税率が適用されています。

また、軽減税率は紛争の火種にもなっています。イギリスでは、流通大手マークス・アンド・スペンサー社が販売するティーケーキは、ケーキ(軽減税率)か、ビスケット(標準税率)かを巡り、13年間にわたって法廷で争われました。

また、ドイツでは、ソリストが自らコンサートを主催する場合(軽減税率)と、他が主催するコンサートにおいて演奏サービスを提供する場合(標準税率)の適用性の妥当性が争われました。

このように軽減税率は、民主主義を堕落させ、紛争を増加させるのです。

◆商品の価値は市場で決まるもの

その原因は「そもそも商品の価値を政府が決めるものではない」ということを政府が理解していないことにあります。経営学者ドラッカーは次のように言います。

「キャデラックを作っている人たちはキャデラックという車種の輸送手段を作っていると答える。本当にキャデラックは、シボレー、フォード、フォルクスワーゲンと競争しているのか。ニコラス・ドレイシュタットは『われわれの競争相手はダイヤモンドやミンクのコートである。顧客が購入しているのは、輸送手段ではなくステータスである』といった。この答えが破綻寸前のキャデラックを救った」(マネジメントより要約の上、一部抜粋)

このように商品は何であるかは顧客(市場)に聞かないとわからないのです。生産者ですらそうなのですから、ましてや政府に商品の分類や価値がわかるはずありません。

最後に、軽減税率は社会的コストを増加させます。細かな議論には立ち入りませんが、事業者は仕入れと売り上げを異なる税率に区分して記帳しなければならず、大きな負担を事業者に強います。

また、政府にとっても複雑な税システムは徴税コストを増加させ負担となります。幸福実現党はこのような、複雑怪奇な軽減税率ではなく、単純に消費税を5%へと減税することで日本を繁栄に導いて参ります。

赤塚一範

執筆者:赤塚一範

HS政経塾スタッフ

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